「内面の美」とは一体何か? 不倫モデルのグランプリで露呈した「ミス日本」コンテストの限界とは

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 モデルの椎野カロリーナさんが選出された「第56回ミス日本コンテスト2024」グランプリの座が、約2週間で空位に。理由は妻子持ちの医師との不倫という、ミス日本始まって以来のスキャンダルである。

 ミス日本コンテストの公式HPによると、同コンテストは「『日本らしい美しさ』を磨きあげ、社会で活躍することを後押しする日本最高峰の美のコンテスト」だという。そして「日本らしい美しさ」とは、「見た目の容姿だけでなく、心の持ちようや社交性など幅広い人間性」にあるとして、「内面の美・外見の美・行動の美」を提唱しているだけに、基準が根底から覆されてしまったか格好だ。

 しかしそもそも何をもって「内面の美」を測るのか。運営側は「欧米化が進むとともに美意識が肉体美へと移行するのにともない、ミスコンの多くは八頭身に代表されるプロポーション審査へとその比重を変えてきました。そのような流れのなかで、ミス日本の第一の特徴は『容貌』『容姿』に加え、『教養』『心映え』を重視すること」と宣言しているが、椎野さんの見た目はまさに欧米的な八頭身。「日本らしい」美しさと聞いて、彼女のような容姿を思い浮かべる人はそう多くはないだろう。ルッキズムの権化として批判されがちなミスコンテストではあるがゆえに、無理やり「内面」や「行動」を持ち出してきた印象は否めない。

「内面の美」=苦労話? “美人なのにこんなに苦労している”ギャップ大会と化している実情

 全く別のミスコンを見たことがあるが、内面を推し量るには「苦労話」のインパクト次第なのかもと思った。闘病経験や生まれつきの障害、家族や友人の死、受けた差別やさまざまな社会課題の前で無力な自分……そんな過去を乗り越えて今のわたしがあります!というエピソードの数々は、「美人だからといって人生イージーモードと甘えず、努力して自分の人生を切り開いてきた」というアピールになるということだろう。

 うがった見方になるが、椎野さんのバックグラウンドは確かに目を引く。ウクライナ人の両親を持ち、昨年日本に帰化。母語は日本語だが、見た目とのギャップに苦しむこともあったという。何かと多様性が叫ばれる現代的な問題意識との関連が容易に想像できる。単に勉強や部活に励んできた候補者の話はかすんでしまう。

 今回の件とは事情が違うが、ホステスのアルバイト経験を理由に内定を白紙にされた、「ミス東洋英和」の元日本テレビアナ・笹崎里菜さんのことを思い出した。ミスコン覇者には、見た目の良さにあぐらをかかず苦労し続けるべし、という妙な理想が押しつけられ続ける。パパ活とか水商売とか、顔でラクに稼ぐという考えは捨てろと。

 当時の日テレは「清廉性」という言葉で内定取り消しを正当化したが、あらゆるミスコンテストが掲げる「内面の美」に通じる考えのように思う。椎野さんも西洋的な見た目以上に、不倫相手がメディアで活躍する裕福な医師だったという点が、さらなる反発を招いたのではないだろうか。

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