「小顔」「瘦せている」は国によっては悪口に 褒めるときに波風が立たない表現とは(中川淳一郎)
先日スーパーで食料品の買い物をした後、鶏卵が安いドラッグストアにハシゴしました。なじみの男性店員がいるのですが、彼から実に妙なホメ方をされました。
「おっ、ネギが似合ってますね!」
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スーパーのレジ袋からは長ネギの青い部分が出ていたのですが、相好を崩してこんなことを言われた。こちらも「あぁ、そりゃどうもありがとうございます!」と答えたのですが、よくよく考えるとホメられているわけではないような気もする。
「ベストジーニスト」は「ジーパンが日本で一番似合う人物」としての評価ですが、先の場合は「彼の中では、私は長ネギがかなり似合う人物」ということなのかもしれません。いずれにしても、「生活感がある」「街になじんでいる」という意味でホメ言葉だと捉えることにしました。
ここから妙なホメられ方について挙げますが、まずは知人の赤ちゃんのお披露目会での来客女性の「ちっちゃーい!」発言です。そりゃあ赤ちゃんが小さいのは当たり前。なぜその感想を言うのだ?と疑問を持ちました。お宅を出てから「あの『ちっちゃーい!』ってどんな意味があったのですか?」と聞いたら「とてもじゃないけど『かわいいー!』と言えない顔だったの。でも『ちっちゃーい!』と言っておけばなんかホメてる感じになるのよ」とのことです。
これに関連し、ドイツ人の父と日本人の母を持つサンドラ・ヘフェリンさん原作の『「小顔」ってニホンではホメ言葉なんだ!? ~ドイツ人が驚く日本の「日常」~』という漫画も参考になります。日本人は小顔であることと「等身」の数値が高いことを重視します。しかし、ドイツ人に対して「小顔」と言うと「脳みそが詰まっていないバカ」といった意味合いになるので決してホメ言葉ではない。
アメリカで「痩せてますね~(スタイルいいですね~)」を直訳して「Wow! You are so skinny!」なんて言ってしまったとしましょう。ヘビメタバンドの痩せた男性メンバーが相手だった場合、イラッとされる可能性はかなり高いでしょう。なにしろ「skinny」は「ガリガリの弱虫」的な意味合いもあるため、明らかに不快の念を与える言葉なのです。
こうして国によってもホメ言葉は違うのですが、欧米・インド・中東では胸毛や濃い腕毛が案外男らしさの象徴になっている。しかし、脱毛をするのがイケてる男!的空気感の日本では「立派な腕毛ですねー」とか「〇〇(力士)の背中毛が素敵」なんて言うとバカにされていると思ってしまうかもしれません。
冒頭のドラッグストアの話に戻りますが、「鶏卵が安いドラッグストアなので重宝しています!」なんて書いてもあんまりホメ言葉になりませんよね。「知識の豊富な薬剤師がいる」とかにした方がいいでしょう。彼からしても「ウチは玉子屋じゃねー! 薬買え!」の気持ちはあるかも。
ただ、今の時代、個々人の身体的なものやキャリア等についてホメ言葉を言ってもセクハラや経歴侮辱認定される可能性があるので、ホメる時は「ネギが似合いますね」ぐらいがちょうどいい波風立たないレベルですね。