TBS「不適切にもほどがある!」 なぜミュージカルが? クドカン5つのこだわりを解説
クドカンこと宮藤官九郎氏(53)が脚本を書いているTBS「不適切にもほどがある!」(金曜午後10時)は斬新なタイムリープ作品だ。しかも面白い。どうして面白いのか。5つの理由を挙げる。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
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自分が生きる時代は選べない
タイムリープは現代の科学技術ではあり得ない話。だからタイムリープ作品はさまざまな理由を付けて説得力を持たせようとする。例えば日本テレビ「ブラッシュアップライフ」(2023年)は仏教の輪廻転生の考え方を下地にした。
一方、「不適切にもほどがある!」はバスがタイムマシンで、「喫茶&バー すきゃんだる」のトイレが86年と現代をつなげている。こんなチープなタイムリープは前代未聞だが、どうしたってウソなのだから、それでいいと考えたのだろう。クドカンらしい開き直りだ。
タイムリープ作品は絶え間なくつくられ、飽きられることがない。どうしてなのだろう。
「不適切にもほどがある!」の磯山晶プロデューサー(56)の先輩である元TBSのドラマ制作者から、こう教えられたことがある。この言葉にタイムリープ作品がウケる理由の一端がありそう。
「誰にも同じ宿命がある。それは自分が生きる時代は選べないということ」
価値観の変化に拘るところが新しい
男性の場合、戦前に成人だったら、どんなに大富豪であろうと戦場に行っていた可能性が高い。また、高度成長期にサラリーマンだったら、馬車馬のように働くことが正しいとされた。
タイムリープ作品は自分が生きていない時代や忘れかけていた過去を見せてくれる。この作品に限らず、これがタイムリープ作品の大きな魅力にほかならない。
しかも「不適切にもほどがある!」は過去のタイムリープ作品とは違う。「ブラッシュアップライフ」は安藤サクラ(37)が演じた主人公が89年に戻った。この作品は阿部サダヲ(53)が扮する主人公・小川市郎が、86年と現代を行き来する。時間設定はほぼ一緒だが、発想が全く異なる。
この作品の場合、38年間の価値観の変化を中心に描いている。「メタルテープとクロームテープ」(第1回)、「写ルンです」(同)「クラリオンガール」(第2回)など懐かしいモノも登場するが、ウエイトが大きいのは価値観。これが新しく、1つ目の面白い理由だ。
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