FA選手の「人的補償」は本当に撤廃すべきなのか? 楽天は「星野さんの一声で松井稼頭央をプロテクトした」

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原監督が撤廃を訴えた過去も

 海の向こうに目を向けると、MLBに人的補償は存在しない。6年、メジャーでプレーすれば自動的にFAとなり、移籍となれば旧所属球団には獲得した球団のドラフトの指名権が譲渡される。さらに「ぜいたく税」という課徴金制度があり、球団の総年俸が一定額を超えると、金銭的に大きな負担がのしかかってくる。

「人的補償はありませんが、有望な新人を獲得できる権利やぜいたく税の存在が戦力均衡に寄与しています。NPBとは違った形で、金満球団の野放図な選手獲得に歯止めをかけています」

 米大手マネジメント会社の代理人はこう説明した上で「NPBで人的補償を撤廃するなら、戦力を均等化させる代替案を導入する必要があるでしょう」と指摘する。

 巨人の原辰徳前監督は19年オフ、人的補償の撤廃を訴えた。「他のチームももっと参戦すると思う。FAは名誉なこと。手を挙げたら、ちゃんと意見を聞いてもらうのは選手、ルールに対する感謝と敬意。(人的補償は)逆行している。変な話だよ」と語り、代替案として金銭による補償の増額を挙げた。

12球団には温度差

 これに対し、中日などが真っ向から反論。12球団の足並みはそろわなかった。前出の楽天関係者は「FAで選手を獲られる側の球団が主張するなら説得力もありましたが、最もFAで選手を獲ってきた巨人の監督で、しかも、その年のオフにも美馬(学投手/楽天からロッテに移籍)、鈴木(大地内野手/ロッテから楽天に移籍)と複数選手のFA獲得を目指していました。対案も戦力均衡を維持する意味では不十分だったと思います。人的補償を逃れるために一時的に育成契約とする抜け道を利用した巨人のやり方にも批判的な声は多かったですから……」と述懐する。

 DeNAの中畑清元監督は翌20年12月のスポーツ紙の紙面で、人的補償の代わりに翌年のドラフト上位指名権の譲渡という私案を披露した。MLBの現行制度に似たアイデアで、これまでも浮上したプランだが、各球団の利害関係が複雑に絡む日本球界では実現に至っていない。

「どうしても球団間の温度差があって、なかなかまとまりません。今回の和田のようなケースが今オフ以降もたびたび出てくるとは思えないだけに、プロテクト枠を増やすなど現行制度のマイナーチェンジが現実的ではないでしょうか」(同楽天関係者)

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