「芸人とマネージャーの力関係を変えたのはダウンタウン」 松本人志騒動、吉本興業はどこでどう間違えたのか

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“カバンなんか持たんでええ”

 岡本社長はダウンタウンの元マネージャーではある。しかし社長として、少なくとも対等の立場でモノが言えないのはやはり歪な関係と言わざるを得まい。

「昔の吉本では、芸人とマネージャーの間でもっとコミュニケーションが取れていました。怒られたりけんかすることもありましたが、家族的な会社で、芸人に対してモノが言えないということは全くなかった」

 そう振り返るこの元幹部社員に「芸人との付き合い方」を指南したのは、吉本の中興の祖ともいわれる故中邨(なかむら)秀雄元社長だった。

「中邨さんがまだ役員だった頃、私を含む若手社員によくこう言っていました。『芸人のカバンを持つな。芸人を師匠と呼ぶな。この二つを徹底しろ』『お前らは芸人のカバン持ちとちゃう。プライドを持って仕事をせえ』と」

 そんな中邨氏の教えは芸人たちにも浸透していた。

「移動先で私が西川のりおさんのカバンを思わず持ってしまった時、のりおさんが“お前、カバンなんか持たんでええ。そんなん持たんと、もっとおもろい仕事いっぱいとってきてくれや”と気遣ってくれたのを覚えています」

芸人とマネージャーの関係を変えたダウンタウン

 芸人とマネージャーの正常な関係。それが変化するきっかけを作ったのが、

「ダウンタウンの二人と、彼らの才能を見いだして育て上げた大崎洋前会長です。例えば、ダウンタウンの自宅まで迎えに行ったりするようになったのですが、そんな特別待遇はそれまでありませんでした。こうしたやり方が今田耕司などのダウンタウン一派にも広がり、会社全体に浸透していったわけです」(同)

 吉本が当初、「当該事実はない」とのコメントを出したことを「会社の初動ミス」と斬って捨てたのは西川のりおだった。吉本の“古き良き時代”を知る西川は、あえて批判役を買って出ているに違いない。

週刊新潮 2024年2月8日号掲載

特集「『松本人志騒動』に苦慮 『吉本興業』はどこでどう間違えたのか」より

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