「芸人とマネージャーの力関係を変えたのはダウンタウン」 松本人志騒動、吉本興業はどこでどう間違えたのか
「当該事実は一切ない」から「事実確認を進めている」へ――。人様を笑わせてナンボの吉本興業が、松本人志の「性加害疑惑」を巡って笑えない初動ミスを犯したのは間違いない。その背景を探ると、ある時期から変化した、吉本と芸人の「歪(いびつ)な関係」にたどり着く。
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吉本興業は危機管理が苦手な会社である。
以前、本誌(「週刊新潮」)が“怪芸人”中田カウスの暴力団との交際などについて報じた際には、NHKがカウス出演分の番組の放送延期を決定したにもかかわらず何ら会見等の対応をせず、関係者を唖然とさせた。2019年の「闇営業問題」の時は岡本昭彦社長が5時間半にわたる記者会見を行ったものの、「史上最悪の会見」と揶揄されることに。そして今回、またしても吉本の“危機管理下手”が満天下にさらされたのである。
昨年末、「週刊文春」に報じられて以降、各所に甚大な影響をもたらしている「ダウンタウン」松本人志(60)の「性加害疑惑」。記事が出た直後、吉本は「当該事実は一切なく、(略)厳重に抗議」する、としていた。ところが、今年1月24日に吉本が公表した見解では、「当事者を含む関係者に聞き取り調査を行い、事実確認を進めている」と、大きく軌道修正したのだ。
危機管理の四つのステージ
「週刊文春の発売直後に、吉本興業が“当該事実は一切ない”という主旨のコメントを発表したのは、明らかな失敗でした。危機管理は『感知・解析・解毒・再生』という四つのステージに沿って進めるという理論に反しているからです」
そう話すのは、株式会社リスク・ヘッジ取締役の田中辰巳氏である。
「感知とは、危機を感じ取ったら事実をくまなく知るという作業で、それができていないと次のステージの解析を間違えてしまいます。案の定、吉本は最初にコメントを出した約1カ月後に軌道修正。“真摯に対応します。調べます”とのコメントを出すことになってしまいました。これではまるで松本さんの疑惑が真実であると認めるかのような印象を人々に与えてしまいます」
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