支持急上昇の極右政党が「EU離脱」に言及…ドイツは長期不況の可能性が高まりすべてが良くない方向に進んでいる

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日本以上に深刻な労働力不足

 建設業も逆風にさらされている。ドイツ経済研究所は「今年の建設支出は2009年の金融危機以降で初めて減少する」と予測した。背景にあるのはドイツの不動産バブルの崩壊だ。

 ドイツの戸建て住宅やマンションなどの価格は前年に比べて10%以上下落しており、市場関係者は「底が見えない」と警戒感を強めている。住宅価格が下落している主な要因は欧州中央銀行(ECB)による利上げだ。

 ドイツでも住宅用不動産以上に深刻なのは商業用不動産だ。米国と同様、取引の急激な鈍化によりここ数十年で最も深刻な危機に見舞われ(1月23日付ロイター)、大都市では資金繰りの悪化で建設が止まった高層ビルが林立している。

 ドイツの潜在成長率(経済の実力を示す指標)が0.4%と日本の0.5%を下回っていることも気になるところだ。日本に次いで高齢化率が高いドイツ(22%)では、今後10年以上にわたって「ベビーブーム」世代が引退することから、日本以上に深刻な労働力不足が懸念されている。

 約30年前の日本はバブル崩壊により長期不況に陥ったが、ドイツも「二の舞」を踏むのではないかとの不安が頭をよぎる。

極右政党の躍進は確実か

 経済の低迷はドイツ政界にも暗い影を投げかけている。ドイツ政界において移民問題は悩みの種だ。景気の悪化が進むにつれて、「よそ者(移民)」への反発が強まっている。

 移民排斥を訴える極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の支持率 は急上昇しており、政権与党の社会民主党(SPD)と緑の党、自由民主党(FDP)に迫る勢いだ。今年9月に予定されている旧東ドイツ地域3州の議会選挙でも躍進が確実視されている。

 ドイツ銀行のゼービングCEOは1月29日、「AfDの台頭はドイツへの投資のリスクになる」と警鐘を鳴らした。

 だが、AfDの主張はとどまるところを知らないようだ。共同党首のアリス・ワイデル氏は先ごろ、「今年5月に開催される欧州議会で同党が求める移民制限案が受け入れられなければ、政権与党となった暁にEUから離脱すべきか否かを問う国民投票を実施する」と驚くべき発言をした(2月4日付クーリエジャポン)。

 域内市場の恩恵を最も享受しているドイツだけに、2016年の英国のようなEU離脱はにわかには考えられない。だが、ドイツではすべてが良くない方向に進んでいるのも事実だ。

 悩めるドイツの今後の動向について細心の注意を払うべきではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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