ついに韓国バブルが崩壊し始めた 「4月の総選挙までは」と必死に持たせる尹錫悦政権
「バブル価格」は崩壊後に戻る
――尹錫悦政権の不動産対策は成功するでしょうか?
鈴置:まだ、分かりません。バブルの崩壊に抗うのは難しいからです。2022年秋にマンション価格が下がり始めたのは、金利の高止まりと建築資材の高騰がきっかけでした。
ただ、それだけではありません。本質的には生産年齢人口(15-64歳)が2019年にピークアウトしたことが原因です。生産年齢人口が急増する局面ではカネ余りが発生する。支出以上に所得が増加するためで、余ったおカネは株式や不動産市場に向かう。この極端な姿がバブルです。
生産年齢人口が減る局面では、おカネは市場から引き上げられ、引退した高齢者の生活費に回る。これが急ならバブルは崩壊します。1990年代の日本がその典型です。
日本の生産年齢人口は1995年にピークアウトしました。2013年にピークアウトした中国も今、不動産市況の悪化と不動産業者の相次ぐ破綻に直面しています。
ソウルのマンション価格は2016年からの5年間で2・1倍に高騰しました。しかし、人口は2020年を頂点に減り始めました。不動産の主な購入者である生産年齢人口も2019年をピークに減っています。
日本の例を見てもバブルがはじけた後、不動産価格は「バブル前」に戻るのが普通です。韓国が「バブル価格」を維持するのは相当な無理があります。
韓国のサラリーマンは投機家
――ではなぜ、尹錫悦政権は不動産価格の維持にこだわるのでしょうか?
鈴置:不動産価格が大きく下がればマンション開発事業が減り、景気が冷え込みます。事業が途中で中断すれば不動産PFは破綻します。
不動産PFへの貸し出し規模は2023年第3四半期で総額134兆3000億ウォンに上る。銀行の貸し出しは44兆2000億ウォンと最大ですが、延滞率は0・0%と健全です。
一方、証券会社の貸し出しは6兆3000億ウォンとシェアは高くありませんが、延滞率は13・9%に達しています。この「弱い輪」から金融システムの動揺が始まると懸念されています。
一方、投機家の多くも破綻します。韓国では普通のサラリーマンでもマンションを数軒持っている人――投機家が結構います。1軒は自分が住んで、残りは貸し出していますがマンションの代金を全額、自分で支払ったわけではありません。
家主は毎月の家賃の替わりに、マンション価格の7-8割の「チョンセ」――保証金を受け取って、不動産投資に回すケースがほとんどです。それを繰り返すことで何軒も家を持てるのです。
もっとも、うまくいくのは不動産価格が上がっている時の話。借家人が退去する際に返すチョンセは、次の借家人から受け取るチョンセで充てるのが普通です。
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