初期費用は770円、お手入れは「3日で15分」 高齢者のメンタルに効く「エアプランツ」の勧め

ドクター新潮 ライフ

  • ブックマーク

植物が好む環境は人間と同じ

 ここまで増えると日々のお手入れが大変かというと、真夏を除いて、毎日水やりをする必要がなく、2、3日に1度、乾き具合をみて水やりするだけである。スプレーを使っての作業はおよそ15分。多少腕が疲れるが許容範囲だ。

 2年間試行錯誤して分かったのは、植物が好む環境は人間と同じということである。真夏の暑さや真冬の寒さには注意が必要だし、爽やかな風が吹き抜ける場所は心地がいい。

 そして、植物は、自分がこう仕立てたいと思えば、その通りに成長してくれる。人間の子供はほぼ親の期待通りには育たないものだが、植物は違う。

 一例を挙げてみよう。

 私は室内に一つ、鉢植えのアルテシマ(観葉植物)を置いているのだが、最初は80センチほどの高さだったものが、短期間で40センチ伸びた。しかし、あまりに大きくなると手入れが大変だし、場所を取る。そこでマイルールを作り、アルテシマに言い聞かせた。

「私より大きくなったら、切ります」

 言い聞かせているうちに、変化が起きた。天辺の葉が、首を傾げるように横向きになったのだ。数センチ低くなっている。私の言葉を理解したとしか思えない。

 作家の佐藤愛子氏は100歳を迎えた時、長寿の秘訣(ひけつ)を聞かれ、こう答えている。

「わがままに生きるってことじゃないですか。人間、好きなことをやっていれば、元気になるんですよ」

 私も冒頭に挙げた高齢者への提言を実践しておらず、わがままに生きているが、楽しみを見つけたおかげで健やかに生活できている。エアプランツ、お勧めです。

松田美智子(まつだみちこ)
作家。1949年生まれ。フィクション、ノンフィクションともに多くの作品を手掛けてきた。小説に『天国のスープ』、ノンフィクション作品に『仁義なき戦い 菅原文太伝』『水谷豊 自伝』(共著)等がある。

週刊新潮 2024年2月1日号掲載

特別読物「『趣味サークル』より“我が儘に生きたい” 高齢者にお勧め健康対策は『エアプランツ』」より

前へ 2 3 4 5 6 次へ

[6/6ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。