初期費用は770円、お手入れは「3日で15分」 高齢者のメンタルに効く「エアプランツ」の勧め
成長の早いエアプランツも
私は大きさが異なるキセログラフィカを3株育てている。キングというより、優雅なクイーンの雰囲気があり、とにかくかわいらしい。カールした葉が絡まないように時々ほぐしていたのだが、これはやめた方がいい行為だった。植物はボディタッチを嫌うのだ。
「植物は触られるとストレスを感じて、葉の裏からエチレンガスを出します」
杉山氏の言葉はショックだった。かわいいと触りたくなるのは人情ではないか。しかしストレスを与えるのはかわいそうなので、触れたい気持ちを我慢している。
エアプランツではないが、同じく土が必要ない植物にビカクシダ(別名コウモリラン)がある。
ビカクシダは切れ込みが入った葉が力強く、野性味を感じさせるため、男性的な植物といわれるが、女性の愛好家も多い。コルクや板に着生させて育てると迫力満点である。
実際に育ててみて感じたのは成長の早さである。厚みのある緑の胞子葉が上へ上へと伸びていく様は、園芸の喜びを教えてくれる。
現在私は、板付けしたビカクシダを壁に掛けている。なにしろ日々成長するので、同じものを見ているという既視感がない。インテリアグリーンとしても上等だ。
もはや中毒
もうひとつ、枯淡の趣きが好きな人には、苔玉(こけだま)を作るという選択もある。
苔玉は盆栽の根洗いと呼ばれる鑑賞方法が始まりで、園芸植物を鉢から抜き出し、その根の周りに苔を巻き付けて丸く仕立てる。必要なのは、好みの植物と苔、苔を巻くワイヤーだけである。外から土が見えないので、リビングはもちろん、キッチンにも置ける。
コロンと丸い苔玉が風に揺れる様は、里山の情景を想像させてくれて、付き合うほどに味わいが深まる。
私は苔玉を作るようになってから、散歩の途中で苔を見つけると、使えるかどうか考えるようになった。苔の魅力を語ると、大抵の友人は引いてしまうのが残念だが……。
2年ほど前から始めたエアプランツやビカクシダの着生、苔玉作りは、植物を育てる喜びを堪能させてくれた。現在では、コルクや流木に着生させたエアプランツが25個、ビカクシダを着生させた板が5枚。松などの常緑樹や、観葉植物で作った苔玉が16個にまで増えた。もはや中毒である。
前述した杉山氏によれば、
「植物中毒になるのは、植物と過ごした楽しい時間があったからです」
その通りである。もうひとつの理由は、一つ一つの植物に個性があるので、ついつい数を集めてしまうからだ。
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