初期費用は770円、お手入れは「3日で15分」 高齢者のメンタルに効く「エアプランツ」の勧め
人生100年時代を最後まで健(すこ)やかに過ごすためには、社会的孤立を避けなければならない。高齢者にはそんな“強迫観念”が襲いかかる。だが現実的に、人付き合いほど煩(わずら)わしいものはない。ならば……。メンタルの安寧をもたらす、実録「エアプランツ」の勧め。【松田美智子/作家】
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子育てはとうに終わり、孫の世話も一段落した頃、これからは自分が楽しむために時間を使いたい、と考えるようになった。
では、実際になにをするのか。高齢者と呼ばれる世代への提言は多い。例えば、孤独に陥らないように地域の活動に参加したり、趣味のサークルに加入したりして、仲間を作る。人とコミュニケーションを取り続けることは、認知症の予防にもなるという。
また、なによりも健康が大事なので、1日8千から1万歩を目標に歩く。自宅でも、さまざまなストレッチ運動をして、体の柔軟性を保つ。足腰を鍛えるには階段の上り下りも有効だ。思わぬ転倒を防げる。
もちろん、食事の内容にも気を付けなくてはいけない。まずは高齢者が控えた方がいいもの、積極的に食べるべき食品のリストを頭に入れておく。適度な糖質制限も必要で、食事の順番も、血糖値を上げないよう最初に野菜を食べた方がいいとか、いや、筋力、活力が衰えたフレイルにならないように肉や魚などのタンパク質を優先すべしとか、諸説あって悩ましい。さらには、食品添加物にも注意が必要だ。発がん性物質が含まれていれば、健康を損なう危険性があるからだ。
犬や猫を飼うという選択肢はなかったが…
時間に余裕はあるものの、高齢者がやるべきことは実に多い。これらの提言を実践すれば健康が保てるのだろうし、もはや死なないような気さえしてくる。
ただ、私が一番に望んでいるのは、メンタル面の安寧であり、日常に楽しみを見つけたいのだ。できれば、何かを育てて愛でたいが、犬や猫を飼うという選択肢は最初からなかった。
住宅事情からして許されないし、たとえ許されたとしても、自分の年齢を考えれば、最後まで世話ができるかどうか心もとない。
そこで思い付いたのが植物を育てる園芸だった。園芸なら、人の手を借りなくても済むし、常緑のもの以外に、落葉するものなど種類を集めれば春夏秋冬の移ろいを感じられるだろう。
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