アジア杯・イラン戦の敗北は森保監督に原因 問題のあった采配を徹底検証

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鎌田大地と田中碧の必要性

 もしも森保監督が板倉のケガの状態を把握していたのであれば、同点にされた時点で板倉を交代させるべきだった。傍目には失点に対する非情な「懲罰の交代」と映るかもしれないが、さらなる失点と彼の選手生命を守る意味での交代だけに、森保監督には躊躇って欲しくなかった。

 板倉のケガに関しては、イランは高さもありロングスローを含めセットプレーではロングボールを多用してくることが想定されたので、冨安健洋と伊藤洋輝に加え町田浩樹による3BKという選択肢もあったかもしれない。しかしこれは結果論にすぎないだろう。

 日本が準々決勝で敗れたのは前々回の2015年オーストラリア大会のアギーレ・ジャパン以来となる。この時はUAEとPK戦までもつれ、07年の東南アジア大会(オシム・ジャパン)も3位決定戦で韓国にPK戦で敗れている。90分以内での敗戦となると1996年の準々決勝クウェート戦(0-2)まで遡る。実に28年ぶりとなるアジアカップでの敗退だ。

 それでも中東勢がイラン、サウジアラビア、カタールだけでなく、イラクやヨルダンなどが確実にレベルアップしていること。そしてそれは中央アジアや東南アジア諸国にも当てはまることを実体験できたことは、W杯予選に向けて今大会の収穫と言えるだろう。

 と同時に、クリーンシートの試合が1試合もなかったことは、日本代表の正GK(U-23日本ではなく)は誰なのかということと、板倉とこれまでケガがちの冨安以外のCB陣の経験値のアップが急務となる。攻撃陣では招集外だった鎌田大地と田中碧の必要性を改めて感じたし、森保監督の試合中の采配を含めて課題も多く出たアジアカップ2023だった。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

デイリー新潮編集部

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