アジア杯・イラン戦の敗北は森保監督に原因 問題のあった采配を徹底検証

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墓穴を掘る選手交代

 前田が右サイドにスライドすれば、イランが攻勢を強めていた左サイドからの攻撃に対してもブロックの人数を増やせたし、久保がピッチにいることで三笘へも彼が勝負しやすいタイミングでパスが出たことだろう。

 久保と前田を下げたことは、イランの攻勢に拍車をかける「悪手」でしかなかった。自ら墓穴を掘る選手交代だった。

 もう1点は、すでに多くのメディアが指摘しているCB板倉滉である。昨シーズンに大ケガをして、元旦のタイ戦も帰国したもののプレーは回避。今大会に入ってからもベトナム戦とイラク戦には出場したが、インドネシア戦はメンバー外となり、ラウンド16のバーレーン戦では後半アディショナルタイムの競り合いで再び足を傷めた。

 それでもFWサルダル・アズムンを擁するイラン戦では彼の力を必要と判断したのだろう。板倉の足の状態が100パーセントではないにしても、それなりにプレーできるなら起用したくなるのは、どの監督も同じではないだろうか。

 しかし板倉は「それなりにプレーできる」状態ではなかった。異変を感じたのは前半39分のプレーだった。右サイドでトップ下のサマン・ゴドスと空中戦を競った。競り合っても勝てないボールにアタックし、競り負けて尻餅をついたことで「死に体」となり、ゴドスにドリブル突破からシュートまで許した。

“板倉らしくない”プレー

 本来の板倉なら、競り合うと見せてこぼれ球を拾う準備をしていただろう。ゴール前ならいざしらず、CBが無理をして競り合う必要はないエリアであり、ヘッドで落とされたボールに走り込む選手をケアすべきシチュエーションだったからだ。にもかかわらず、慌てて競りに行くあたり、いつもの板倉ではないし焦りを感じたものだ。

 そして後半10分、アズムンにタテパスが入った瞬間にMFモハマド・モヘビに背後を取られて同点ゴールを許した。19分にはオフサイドだったがメフディ・タレミに抜け出されたりするなど、“板倉らしくない”プレーが目についた。守備の選手が試合中に「守備」で目立つことほど危険なことはない。

 試合後の板倉は「こんなに自分自身でゲームを壊すことは今までなかった。それを勝たないといけない状況でやってしまったこと。自分の力のなさが出たなと感じている」と悔やみ、「ああいうパフォーマンスをしている時点で、代表選手としてピッチに立つ資格はない」と失点場面を振り返ったそうだ。しかし、選手はよほどのケガでない限り、自分からピッチを後にしたいとは言わないことのほうが多い。まして失点に絡んでいれば、それを挽回したいと思うだろう。

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