アジア杯・イラン戦の敗北は森保監督に原因 問題のあった采配を徹底検証
AFCアジアカップカタール2023の日本は準々決勝でイランに1-2の逆転負けを喫し、最多となる5度目のアジア制覇への挑戦はあっけなく終わった。勝つこともあれば、負ける時もあるのが勝負事だ。今大会、これまで勝った試合でも、GK鈴木彩艶やFW浅野拓磨には厳しいことを書いてきた。ミスはミスとして指摘することで自覚してもらい、さらなる成長を期待したからでもある。
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そしてイラン戦である。勝った試合で指揮官が采配を賞賛されることもあれば、負けた試合ではその采配が批判されることも多々ある。イラン戦ほど後者が当てはまる試合もないだろう。試合後の会見で森保一監督は「相手がパワーで押し込んでくる時にどう回避するか。私が交代カードをうまく切れなかったのが敗因」と述べていたが、「交代カード」については次の2点に問題があると思っている。
まず後半22分、MF久保建英に代えてMF南野拓実、MF前田大然に代えてMF三笘薫を送り出した。イラン戦での久保はトップ下から左サイドまで幅広く動いてボールを引き出しただけでなく、タメを作って日本の攻撃にリズムを与えた。前半、日本がボールを保持して左サイドから何度も攻め込めたのは、久保がいたからでもある。守備でも前線からのプレスバックでボール奪取に貢献していた。
その久保を下げて、守備に難点があり、攻撃でもプレーエリアの限定される南野を投入したのは――リードしていて逃げ切りたいという狙いと準決勝を見据えて久保を休ませたいという意図があるのならまだしも――同点にされ、なおかつイランが勢いづいている状況では理解できない采配だった。
理解できない久保の交代
韓国のMFソン・フンミンとMFイ・ガンインは全試合に出場し、ラウンド16のサウジアラビア戦と準々決勝のオーストラリア戦は延長戦とPK戦までフル出場で(イ・ガンインはオーストラリア戦の120+1分に交代)、ヘロヘロになりながらもチームをベスト4へ導いた。そんな姿を見ていただけに、久保の交代にはレアル・ソシエダとプレー時間について密約でもあるのではないかと勘ぐってしまったほどだ。
前田にしても、快足を生かしたプレスバックによるパスカットからのショートカウンターは、イランを大いに戸惑わせていた。記者席で隣り合わせたイラン人記者も、前田にボールを奪われるたびに机を叩いて怒りを表していた。それだけイランにとって前田は、嫌なプレーであり嫌な存在だった。
ジョーカーとして三笘を使いたい気持ちも理解できる。それならばプレーエリアが右サイドに限定され、なおかつ後半はほとんど攻撃に絡めなかった右MF堂安律に代えて前田を右サイドにコンバートし、三笘を左サイドに投入すればよかった。そうすれば、攻勢に出たイランに対し、日本は両サイドでカウンターという武器を持つこともできた。
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