「小池百合子知事」がぶち上げた「給食費負担軽減」に自治体が困惑しているワケ

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多摩地域との「多摩格差」が問題に

 7月の東京都知事選をにらんだ、大盤振る舞いなのだろうか。

 東京都は1月26日、2024年度予算案を発表した。この中で目玉になったのが、高校授業料の実質無償化と学校給食費の補助という二つの子育て支援策だ。

 このうち高校の授業料の無償化については、「親の所得に関わらず、子供たちが安心して学ぶことができる環境を早期に実現する」という。

 学校給食はどうか。文部科学省の学校給食費調査によると、東京の小学校の給食費は2021年度で月額平均4469円、中学校では5337円。電気料金やガス代など、生活費が高騰する中で、家計の一助となる話である。

 ただ、こちらは東京都が直接、家計を支援するわけではなく、あくまで市区町村の「負担軽減」だ。各自治体の判断で給食の無償化に取り組む場合に限り、東京都が半額を補助するという立て付けになっている。

 ここで懸念されているのが、自治体間に生じる「格差」だ。自治体によって財政力に差があるため、無償化を実現できるかどうか対応が分かれる可能性があるという。特に23区と多摩地域との「多摩格差」が問題になりそうだ。

 東京都内の現状を整理すると、23区では来年度、全ての区が給食を無償化する見通しだ。元々、東京都が方針を打ち出す前から、練馬区を除く22区が何らかの形で給食費を無償化する方針を示していた。最も早く手を挙げたのは葛飾区。2024年4月の統一地方選では給食の無償化を選挙公約に掲げる候補者が相次ぎ、その流れが固まった。23区で最後まで唯一残っていた練馬区も今年1月、東京都の支援を受けて無償化に踏み切る方針を打ち出している。

弁当を持参してもらう「ミルク給食」も

 これに対し、約430万人が住む多摩・島嶼地域の状況は心許ない。

 府中市などが昨年、学校給食の無償化を打ち出し、市長が交代したばかりの八王子市も無償化に向けた検討を始めるという。ただし、現時点では予算の発表前ということもあり、明確な方針を示していない市町村が大半だ。

 そもそも、多摩地域では「全員給食」を実現できていない自治体があるほか、離島の小笠原村では牛乳のみ提供し、弁当を持参してもらう「ミルク給食」を採用するなど、給食の実施方法にもバラツキがある。ある自治体の担当者は「財政的には厳しいが、隣の市が(無償化を)始めれば、住民から『どうしてうちではやらないのか』という苦情が届くのは目に見えている」と困惑する。

「スピード感を持って子育て世帯を全力でサポートしてまいります」

 今回の高校授業料の無償化と学校給食の負担軽減は、小池知事が昨年12月、都議会でその方針を示したものだ。今年度に予算化された、子供一人につき月5000円を給付する「018サポート」に続く大型の子育て支援策となっている。

 ただ、「018サポート」と違うのが、都議会からの要望を受ける形で発表したこと。「018サポート」は昨年、小池知事が年始の職員あいさつで突如ぶち上げ、都議会からは「細部まで詰められているのか疑問が残る」などの反発が相次いだ。今回、都議会の場で政策を表明したのも、そうした教訓があったからだとみられている。

 もっとも、その中身は「018サポート」と同じように生煮えだったらしい。

 都庁関係者の解説。

「元々、学校給食の負担軽減は、立憲民主党や共産党など、小池知事とは距離がある会派が主張していたものです。実際、各局が毎年秋に行う来年度の予算要求には、載っていなかった。それが一転、知事とその周辺の判断で決まり、所管が予算案の発表に間に合わせるべく、準備を始めました。事業の担当者はおろか、幹部が知ったのも直前だったというから驚きです」

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