「派閥は本来の政策集団に生まれ変わらなければならない」…茂木幹事長の発言を国民が冷笑する理由
白馬は馬に非ず──詭弁の代表例として知られているのはご存知の通りだ。では、「政策集団は派閥ではない」という主張は真か、それとも詭弁か。自民党の茂木敏充・幹事長は「茂木派」の会長でもあるが、自派の未来について「いわゆる派閥としては解消し、新たな政策集団に脱皮していく」と考えているらしい。
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1月18日に岸田文雄首相が岸田派の解散を発表すると、翌19日には安倍派と二階派も続いた。この3派からは政治資金パーティーを巡る裏金事件で立件者が出ている。
25日には立件されていない森山派も解散を決定。さらに翌26日には派閥ではなかったが、政治資金パーティーは定期的に開いてきた谷垣グループも解散を表明した。
自民党の3大派閥と言えば、安倍派(99人)、麻生派(56人)、そして茂木派(53人)だった(人数は2023年12月末時点)。安倍派は解散、麻生派は存続を早々と決め、好対照な姿勢を見せた。一方、激震続きで右往左往している印象なのが茂木派だ。担当記者が言う。
「1月25日に小渕優子・選対委員長が、翌26日には参議院議員の青木一彦氏が、それぞれ茂木派からの退会を表明したのです。小渕さんの父親は小渕恵三元首相で、青木さんの父親は“参院のドン”と呼ばれた青木幹雄・元自民党参院議員会長。小渕政権で青木氏は官房長官を務めました。“盟友”の子供2人がそろって茂木派を退会すると発表したのですから、インパクトは抜群でした」
離脱の動きは止まらず、茂木派は2月1日現在、8人が退会を表明している。茂木氏は1月29日の記者会見で「いわゆる派閥としては解消し、お金や人事から完全に決別する」、「新しい政策集団のあり方について最優先で具体化していきたい」などと説明した。
派閥の役割
茂木氏の発言は、1月23日に発表された自民党・政治刷新本部の「中間取りまとめ」に沿ったものと言える。派閥の全廃には踏み込まず、「本来の政策集団に生まれ変わらなければならない」という内容だったことは記憶に新しい。
しかし、ここで素朴な疑問が浮かぶ。果たして派閥が政策集団だったことなど、これまでにあったのだろうか──?
約20年間、自民党本部事務局に勤務した経験を持つ政治アナリストの伊藤惇夫氏は「自民党の派閥が政策集団だったことは、これまでに一度もありません」と言う。
「派閥の役割は3つあります。1つ目はカネの配分、2つ目は選挙支援、そして3つ目はポストの配分です。そもそも派閥は政策立案とは無縁の組織です。派閥が政策の勉強会を定期的に開いているという話も聞いたことがありません。ところが派閥パーティーの裏金事件が浮上すると、党内で『真の政策集団として生まれ変わらなければならない』という議論が平然と行われているわけです。有権者にとっては悪い冗談でしかないでしょう」
これまでテレビでご覧になった方も多いだろうが、自民党の各派閥は毎週木曜、正午から派閥事務所で例会を開き、所属議員が弁当など昼食を食べた。国会が閉会中でも例会を開く派閥も少なくなかった。
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