弾道ミサイル攻撃に備え麻布十番駅に地下シェルターを整備? 都市伝説が現実になる日
1月26日、小池百合子都知事は都庁で定例記者会見を開き、都営地下鉄大江戸線の麻布十番駅に併設されている備蓄倉庫を活用して、重大かつ深刻な脅威である弾道ミサイルの飛来にも備えられる施設の整備を進めると表明した。
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会見前日には、新聞・テレビ各社が麻布十番駅に併設する備蓄倉庫を避難場所へと活用する動きをキャッチし、「東京都が『地下シェルター』の整備方針 調査費に2億円」といった具合に報じている。
これまでにも、東京都は地震・火事・水害といった災害時を想定して都内4258か所の施設を緊急一時避難施設に指定している。
「緊急一時避難施設は、国の基準に基づいて指定されています。指定された緊急一時避難施設は基本的に誰もが利用できる公共施設で、その条件は堅牢な建物もしくは地下施設です。堅牢な建物は基本的に構造がコンクリートのものを指します。例えば、学校の校舎や図書館が該当します」と説明するのは東京都総務局総合防災部防災管理課の担当者だ。
学校の校舎や図書館などが指定されていることからも、緊急一時避難施設は諸外国からの弾道ミサイル攻撃を想定したものではない。また、“一時避難”という名称からもわかるように、同施設は長期間にわたって避難することを想定していないので、食料などは備蓄されていない。
しかし、2022年2月にロシアがウクライナへと侵攻。それ以来、日本が他国から攻撃を受けるかもしれないという不安が高まった。
そうした社会的情勢もあり、同年7月に投開票された参院選では、ロシアのウクライナ侵攻を引き合いに出して日本も有事に備えた施設を整備しければならないと主張した候補は少なくなかった。
実際、ロシアの侵攻時にウクライナの首都・キーウ(キエフ)では多くの国民が地下鉄構内へと避難している。そうした様子をテレビで目にしたら、「地下鉄はミサイル攻撃から身を守ることができる」という印象を抱くのも無理はない。
都に聞くと…
長らく「東京の地下鉄は、有事の際に核シェルターに転用される」といった都市伝説が流布してきた。筆者も、2023年1月10日配信のデイリー新潮「再燃する『地下鉄は核シェルター』説… 『3つの鉄道都市伝説』の真相は」で同説を紹介した。
地下鉄核シェルター説は否定されていたが、ロシアのウクライナ侵攻によって、再び「東京の地下鉄はシェルター」説が再燃。さらに、今回の東京都の表明で都市伝説が現実化する可能性が高まっている。
東京都が麻布十番駅の備蓄倉庫を地下シェルターへと転用することを表明したのは、ウクライナを参考にしたからだろうか?
「今回の発表を受けて、各社が『地下シェルター』『核シェルター』といった報道をしていますが、東京都が整備を表明したのは、『より安全に避難できる施設』の整備です。小池都知事も『これまでもフィンランドなど、いくつかのシェルターなども見てまわっております』と会見で発言していますが、『地下シェルター』や『核シェルター』を整備するとは発言していません」(東京都総務局総合防災部防災管理課の担当者)
ちなみに、キーウ地下鉄のアルセナーリナ駅は地下105.5メートルにプラットホームがある。それに対して、東京の都営地下鉄は六本木駅がもっとも深く約42.5メートルとされている。
深いほど安全とは一概には言えないが、もっとも浅い区間を走る銀座線は地下7メートルから10メートルを走っている。しかも、土被りと呼ばれるトンネル上部と地面の距離は約2メートルの厚さしかない。
銀座線は東京で初めて建設された地下鉄で、当時はミサイル攻撃から退避できるような技術力はなかった。実際、1945年1月の空襲(銀座空襲)では、爆弾が銀座駅を直撃して駅構内は大破している。
キーウと比べると東京の地下鉄は圧倒的に浅く、現段階においてミサイル攻撃から身を守るような施設とは想定されていない。
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