【リニア】川勝平太・静岡県知事にJR東海が異例の反論で分かったこと…政治家なのに人の話を素直に聞く気がない
開業時期の間違い
どうやら知事は「2037年までに品川と大阪間を一括で開業すればいいのだから、まだ静岡工区の着工まで時間はある。静岡工区で工事が遅れても問題はない」と主張したかったようだ。
これにJR東海は、知事発言は「(2037年までに)品川・大阪間を全線一括で開業するという趣旨だと思う」と推測した上で、「私どもは品川・大阪間を一括して工事を進めるということは、資金的、経営的にあるいは工事施工能力として大変難しくできないと思っている」と釘を指した。
「先に品川・名古屋間を結んで開業し、収益を得ながら経営体力を回復する必要がある。回復の状況を見ながら順次、大阪まで延伸を行う──これがJR側の説明でした。そもそもJR東海は当初、リニアの大阪開業は2045年と予定していたのです。ところが政財界を中心に『1日でも早く大阪まで延伸すべき』との声が強くなり、JR東海は2016年、財政投融資を活用した建設資金3兆円を借り入れました」(同・記者)
財政投融資を活用することで、長期・固定・低利の貸付を受けることができた。しかも30年間は元本が据え置かれるという好条件だ。
「JR東海は当初、名古屋開業の後には、債務残高を一旦縮減するための時間を8年間置いてから名古屋・大阪間の工事に着手するという計画にしていました。しかし財政投融資を活用した建設資金を得たことにより、この体力回復期間を短縮。最大8年の前倒しが可能になりました」(同・記者)
“部分開業論”を全面否定
第3点目は“部分開業論”だ。昨年12月、川勝知事は「品川・大阪間の2037年の全線開業を一刻も早く実現するため、開業できる状態になったところから開業していくべきだ」と主張した。
「JR東海は、『一部区間を限定的に開業する場合でも、車両基地や指令設備の整備が必要』と指摘しました。川勝知事の提案を実現するとなると、まず部分開業のため基地などを整備しなければなりません。そして名古屋まで開業させるためには、せっかく整備した基地を移転させたりするなど、二度手間どころか三度手間が頻発する事態になります。時間、労力、予算が重くのしかかるのは確実ですし、これで品川・名古屋間の開業がさらに遅れます。メリットがゼロどころかマイナスとなるのは確実で、JR東海は『大動脈の機能を発揮するためにも、東海道新幹線と交差する品川・名古屋が第一局面として行っていく最小単位』、『それ以外の短い区間を部分開業していくことは当社として考えていない』と断言しました」(同・記者)
第4点目はリニア実験線の延伸問題だ。川勝知事は昨年12月の会見で突然、「山梨県を走るリニア実験線は延伸され、山梨県駅と神奈川県駅に接続される。そうすれば営業が可能だ」などと発言した。
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