視聴率は“危険水域”のTBS「ジョンソン」 それでも「リンカーン」を超えるという意気込みを見守りたい理由

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伝説的な人気番組にしたいという意識

 今のTBSでバラエティ番組を作っているディレクターやプロデューサーの多くは、過去に「リンカーン」に携わっていた。そこで学んだものを生かして、新たな番組を作っていき、局としても大きな成長を遂げることができたのだ。

 いわば、「リンカーン」とはTBSのバラエティの原点であり、出発点である。それを引き継ぐということは、ここから新たな歴史を作ろうとしているということだ。つまり、TBSは「ジョンソン」を歴史に残るほどの伝説的な人気番組にしたいと考えているのである。

 初回放送にはそんなスタッフの意気込みがにじみ出ていた。内容は「リンカーン」時代にも行われていた大型企画「芸人大運動会」だった。総勢59名の 芸人が山内軍と濱家軍に分かれてさまざまな競技で対決した。

「リンカーン」時代の大運動会の雰囲気は受け継ぎながらも、メンバーは大きく入れ替わっているし、企画内容や演出も時代に合わせてアップデートされている。気軽に見て楽しめるお笑い番組としてよくできていた。

固定客がまだ育っていないだけ

「ジョンソン」は「毎回違う企画をやる」というのを売り文句にしている。ここにも志の高さを感じる。多くのバラエティ番組では、1つの企画が当たると、それを繰り返すことになりがちだ。その方が安定して数字を取ることが見込めるからだ。

「毎回違う企画をやる」というのは、守りに入らず、どんどん攻めていくつもりだということだ。番組が始まる時点でそれを高らかに宣言していたし、今のところその方針は貫かれている。

 求める目標が高く設定されている以上、結果が出るまでには時間がかかり、苦戦を強いられるのは仕方がない。今のところ、番組の内容自体が面白くないわけではない。これを毎週楽しみに見るような固定客がまだ育っていないだけだ。

 いろいろな企画を試しているバラエティ番組は、1つの企画が当たると一気に勢いに乗って人気が出たりすることもある。開始から約3カ月の現時点でこの番組を評価するのはまだ早い。今どき珍しい正統派バラエティ番組「ジョンソン」の今後に期待したい。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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