ロシア軍輸送機墜落のミステリー ウクライナ軍の誤射説が有力、そこから浮かび上がる戦況

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輸送機を使うことへの疑問

「撃墜されていた輸送機に搭載されていたフライトデータレコーダーやコックピットボイスレコーダーは破壊されたかもしれません。とはいえ乗客名簿や、パイロットと管制官の交信記録、レーダーによる飛行ルートなど、ロシア側が明らかにできる重要証拠はいくらでもあります。遺体安置所を政府系メディアに取材させ、ウクライナの非道を大々的に報道させることもできるはずですが、今のところそのようなニュースは配信されていません。ロシアも安保理などで、いたずらにウクライナを批判するだけです。ウクライナと同じように内実は伴っていないのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 そもそも捕虜の搬送に輸送機を使うのか、という根源的な疑問も無視できないという。

「撃墜されたイリューシン(IL)76は最近、ウクライナのドローン攻撃を受け、かなりの損害が出ています。果たして貴重な輸送機を、単なる捕虜の搬送のために使うのでしょうか。そもそもロシア軍の捕虜搬送はバスか鉄道が基本だと言われています。また、厳密に言えば、今回の飛行ルートはジュネーヴ協定に定められた捕虜に関する取り扱いに違反している疑いもあります。捕虜の安全を保証するため、危険地区の近くを移動させることを禁じているからです。撃墜地区はウクライナの国境に近く、安全だとは言えません。もちろんロシアは旧ソ連時代からジュネーヴ協定に批准しています」(同・軍事ジャーナリスト)

ゼレンスキー大統領の失点!?

 ロシア側は「捕虜を搬送するという飛行計画を15分前、ウクライナに通達した」と主張している。これも疑問だ。

「なぜ捕虜の搬送を、15分前という切羽詰まった状況で通告したのでしょうか。わずか15分の間で、最前線の対空ミサイル部隊に連絡が間に合うか疑問です。捕虜輸送なのですから、数日前とか1週間前に通告することができたはずです」(同・軍事ジャーナリスト)

 一方、ウクライナ側は「輸送機の積み荷はロシア軍の長距離地対空ミサイルシステム『S300』だった」と主張している。

「ウクライナの主張からも、ミサイルを発射したこと自体は否定していないことが確認できます。ミサイルを積んでいると思って輸送機を攻撃したら、ロシア側はウクライナ人の捕虜が乗っていたと主張を行ったわけです。誤射が事実だと国際社会が認めれば、求心力が低下しているとされるゼレンスキー大統領の致命的な失点と見なされ、国内に厭戦気分が蔓延しかねません。プーチン大統領にとっても、自国の領空で輸送機が撃墜されたという事実は容認できないものがあるはずです。結局、ロシアもウクライナも歯切れの悪い批判を続けるだけで、本当の真相解明は厳しいかもしれません」(同・軍事ジャーナリスト)

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