能登半島地震で注目の最新仮設住宅「ムービングハウス」 「耐用年数100年」「ウォシュレット」「全面断熱材」…驚きの高性能が実現できた納得の理由

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 能登半島地震の発生から1カ月が経つなか、現在、急ピッチで進められているのが仮設住宅の建設だ。ひと昔前の「プレハブ小屋」といったイメージと異なり、いまの仮設住宅の多くは高機能を備え、被災者に束の間の「安息」をもたらすことが期待されている。その驚きの実態を取材した。

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 自宅が損壊するなどして住む場所を失った被災者向けの住宅確保が急務となっている背景には、避難所生活の長期化で高齢者を中心に「健康被害」を訴えるケースが増える懸念が高まっているためだ。

 現地で取材を続けるメディア関係者がこう話す。

「石川県内では現在も9000人近くの被災者が厳しい環境下での避難所生活を送っています。ストーブなどがあっても、避難先が体育館だと床が底冷えし、毛布にくるまっても寒さは完全にはしのげません。断水の影響で水が流れないトイレも珍しくなく、避難所内でインフルエンザが流行したケースもある。震災後、避難生活で亡くなる災害関連死は15人にのぼっています」

 そんな過酷な避難所生活を解消するため、自治体側も仮設住宅の建設を加速――。石川県によると、被害の大きかった輪島市や珠洲市を中心に「3月末までに約3000戸」の仮設住宅が建設予定という。仮設住宅には幾つかのタイプがあるが、なかでも現在、注目を集めているのが「ムービングハウス」と呼ばれる仮設住宅という。

すでに18棟が完成

 ムービングハウスとは移動式の木造住宅を指し、正式名称を「スマートモデューロ」という。2018年に災害救助法にもとづく応急仮設住宅として採用され、同年の北海道胆振東部地震や19年の台風19号、20年の熊本豪雨による被災地などに導入された実績がある。

 日本ムービングハウス協会の担当者によると、

「珠洲市に76棟、輪島市に46棟の計122棟を設置する予定で鋭意、作業を進めているところです。(ムービングハウスは)工場で製造し、解体せずに基礎から建物を切り離してクレーンで吊り上げ、そのままトラックに載せて輸送できるため、移動や即応性の高さが特徴の一つです」

 実際、2週間程度で約30世帯分の設置が可能とされ、1月31日には輪島市の多目的広場内に18戸が完成したばかりだ。同住宅は長さ12メートル、幅2.4メートル、高さ2.89メートル。広さ約29平方メートルが基本仕様という。

 設置後に「電気や上下水道、ガスに接続し、設備品などのセットが完了すれば、すぐに生活を始めることも可能」(同)といい、それだけでなく、性能・設備面でも従来の仮設住宅とは大きく異なるのだ。

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