「賃上げ」も「リスキリング」も政府主導 岸田流“経済復活策”で生活は豊かになるのか

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本来の政治の役割

 今、日本では猛烈な人手不足に直面している。新型コロナの収束で、飲食店や宿泊業などは一気に人材難に陥っている。そうした高級飲食店などでは価格を大幅に引き上げる一方で、従業員の給与も引き上げている。デフレ時代に安くなりすぎた販売価格と人件費を適正水準に戻す好機が訪れているということだろう。そうした企業では政府に言われなくても、賃金が大幅に引き上げられ、労働移動が起きているのだ。結局、岸田内閣も、アベノミクス流の市場原理に委ねる方向に向かって行くとした場合、考えなければいけないのは、競争に「負け」た人たちのセーフティーネットを整えることだろう。

 自由競争になれば、就職できない人は欧米並みに増えてくるに違いない。また、会社にクビにされた人たちが次に就職するまでの間の支援する体制が不可欠だ。給与も物価も上がる中で、年金生活者の生活は相対的に苦しくなる。弱者を支えることこそが、本来の政治の役割である。

磯山友幸(いそやま・ともゆき)
1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。87年、日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。現在はフリーの経済ジャーナリストとしての活動とともに、千葉商科大学教授も務める。著書に『2022年、「働き方」はこうなる』(PHPビジネス新書)、『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、『破天荒弁護士クボリ伝』(日経BP社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』、『「理」と「情」の狭間――大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』 (以上、日経BP社)などがある。

デイリー新潮編集部

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