4歳年下の妻は大人しくて逆らわないと思っていたが…浮気三昧の44歳夫が彼女に恐怖を感じた瞬間とは

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優しい妻

 妻はおそらく、同じ車に乗り合わせる時間が耐えられなかったのではないだろうか。ひとりでタクシーに乗ってから、彼もそう思ったという。だが、会社に赴いてとりあえず元気な姿を見せ、定時まで翌日からの仕事の段取りを考えているうちに妻のことは忘れていた。

「みんな僕が仕事で疲弊して倒れたと思っていました。上司は、今日は定時で帰れと何度も言ってくれて。その言葉に甘えて定時で社を出たけど、本当に家に帰っていいんだろうかと悩みましたね」

 それでも帰る場所は他にないのだ。帰ると、息子が飛びついてきた。そのとき初めて、彼は心から息子に「心配かけてごめんね」と言った。その言葉はそのまま妻に投げかけているつもりだった。

「妻とは話をしたいと思いました。でも妻はいっさい言及してこない。まだ本調子じゃないんだから早く寝たほうがいいわよと優しいんです。それを遮って自分から何か言う気になれなかった。勇気がないんですよね」

 その後、つきあっていた女性たちとはいっさい、連絡がとれなくなった。LINEを送ってもスルーされる。電話も出てもらえない。おそらくゆりさんが手を回したのだろうと明良さんは言う。

「最初は家の中が安泰なら、それでいいとも思ったんですが、なんだか見えない圧がかかっているような気がしてならない。妻に何も言えない、妻の言いなりになる。結局、父親と同じ状態なのではないか。エキセントリックだった母に比べれば妻は仏様のように優しいけど、その裏では母より怖い顔を秘めているのではないか。そんな気がしてならないんです」

 油断をすると妻に精神的にもリアルにも刺されるかもしれない。彼はそんな恐怖を感じながら、今日も仕事をして帰宅する日々を送っている。

前編【警官の前でいきなりグーパンチで殴られ鼻血が噴出したことも…超スパルタ母は44歳男性の女性観にどんな影響を与えたか】からのつづき

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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