4歳年下の妻は大人しくて逆らわないと思っていたが…浮気三昧の44歳夫が彼女に恐怖を感じた瞬間とは
前編【警官の前でいきなりグーパンチで殴られ鼻血が噴出したことも…超スパルタ母は44歳男性の女性観にどんな影響を与えたか】からのつづき
友田明良さん(44歳・仮名=以下同)は、大学時代から複数の女性と交際することを続けてきた。浮気が問題視されバイトをクビになったこともあると語るが、背景にあるのはスパルタな母との関係性だ。暴力をふるう母に育てられた明良さんは、中学時代には絶望し、自殺を試みたこともあった。全寮制の学校へ進学し親元を離れたものの、母の言いなりだった父はのちに失踪、妹はシングルマザーとなり一家は崩壊した。明良さんの中で、女性への「憎悪と憧憬」が入り混じっている。
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ヘラヘラしているようでまじめなようで。捉えどころのないイケメンが明良さんだ。喫茶店で話しているとき、こちらがイラつきそうになると、とっさに「何か飲みますか」などと気を配ってくれる。どうにもつかみどころがない。
ともあれサラリーマンになり、仕事を覚える日々が続いた。先輩に飲みにつれていってもらったり上司に怒られたりしつつも彼は貴重な戦力に育っていったようだ。ただ、恋愛だけはうまくいかなかった。学生時代のことを思い出すと、アルバイトをクビになったくらいだから、女性問題で会社をクビにならないとも限らない。そんな轍は踏むまいと慎重にしていたら、女性との縁がなくなった。もちろん、アプローチしてくれる女性はいた。だがことごとく断っていたら、「女性が嫌いなのでは」と噂されるようになった。
「それもいいかと思っていたんですが、30歳を過ぎると、やはり結婚する同僚も増えていく。ここでなんだか僕の悪い癖が出たみたいなんです」
結婚するなら「夫の言動に文句を言わない女性がいい」と思ったというのだ。父を思い出し、母を反面教師としてしまったのかもしれない。そんなとき他部署との飲み会に参加する機会があり、「理想の女性」を見つけた。
「おとなしくてニコニコしていて……。人が見てないところで気配りしていた。居酒屋でトイレに立ったとき、柱のひとつ向こうにある女性トイレで、彼女がトイレ用のスリッパを揃えているのを見てしまったんです。ああ、いい子だなあと心底思いました。こういうこと言うと女性に嫌がられるのはわかっているけど、この人なら妻として満点なのではないかと思いました。共同作業として家庭を作るというより、自分に逆らわない妻という固定観念が強かった」
満たされて幸福なはずが、居心地の悪さをおぼえる
32歳のときにその彼女、ゆりさんと結婚した。4歳年下の彼女は、イケメンなのに浮いた噂もなく、仕事もできる明良さんを心底、尊敬していたようだ。実は交際期間はほとんどなかったというから驚かされる。
「飲み会で知り合って、一度、一緒に食事に行って、その帰りにプロポーズしました。ゆりは面食らっていたようで、『私のことをもっと知らなくていいんですか』と言いました。いや、もうきみのことはわかっているからとゴリ押ししたんです」
すぐにゆりさんの両親に挨拶に行き、「完璧な男」として振る舞った。親とは縁が切れていると話しながら、彼はうっかり涙ぐんだ。それもまた好感度を高めたようだ。
「あのときだけは急に悲しくなりましたね。両親がいない、おそらく生きてはいるけど接点がないと人に言わなければいけない寂しさを初めて感じました。だからといって母に連絡をとろうとは思わなかったけど」
新居はゆりさんの親が頭金を助けてくれて、新築マンションを購入した。30年以上続くローンにめまいがしたが、「そういう煩雑さや理不尽さに耐えることが家庭をもつこと」と学生時代の親友に諭された。
「ゆりは退職し、専業主婦になりました。家事が得意で料理上手。文句のつけどころがないので、仲良く暮らしていたんです。2年後に息子が生まれて、ますます“家庭らしく”なりました。でもねえ、それが油断だったのか」
妻は非の打ち所がない、子どもはかわいい。満たされて幸福なはずが、居心地の悪さばかりを感じるようになっていった。「満たされる」感覚がない人生だったのか、あるいは「満たされる」と「幸福」が一致しなかったのか。
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