支持率リードで増す「もしトラ」の現実味 バイデン大統領の再選を阻む“最大要因”は何か
軒並み好調な米国の経済指標
米商務省が1月25日に発表した昨年第4四半期の実質国内総生産(GDP、速報値、年率換算)は前期比3.3%増となり、市場の予想(約2%)を大きく上回った。
GDPの7割を占める個人消費が2.8%増と堅調に推移したことで、「米国経済がリセッション(景気後退)入りする」との心配は和らいだ。
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企業経営者の見通しも強気に転じている。
全米企業エコノミスト協会が22日に発表した調査結果によれば、「米国経済が今後1年以内にリセッションに陥る確率は50%以下」との回答は91%に上った。大半がリセッションを予想した1年前の調査から様変わりしている。
株式市場も絶好調だ。
ダウ工業株30種平均は3万8000ドルを超え、史上最高値を更新した。半導体を含むハイテク株に幅広くマネーが流入している。利上げの要因だったインフレが沈静化してきたことを受けて、「米連邦準備理事会(FRB)が早期利下げに踏み切る」との期待が株高を演出している形だ。
昨年12月の失業率も3.7%と低水準だ。
バイデン氏苦戦の理由は「インフレ後遺症」
経済指標が軒並み好調にもかかわらず、11月の米大統領選で再選を目指すジョー・バイデン大統領の支持率は一向に改善しないどころか、むしろ悪化している。
ロイターが25日に発表したロイター/イプソスの世論調査結果によれば、共和党の指名候補争いでリードが伝えられるドナルド・トランプ前大統領の支持率は40%、バイデン氏は34%だった。支持率が拮抗していた1月初旬から、トランプ氏が一歩リードしている。
バイデン氏が苦戦している理由の1つとして挙げられるのは「インフレ後遺症」だ。
昨年12月のインフレ率は3.4%まで下がったが、物価は高止まりしている。パンや牛肉、光熱費、散髪代、外食、家賃は新型コロナのパンデミック前の1.2~1.3倍で、いずれも平均時給の伸びを上回っている(1月21日付日本経済新聞)。
「富裕層に引っ張られる形で自動車の価格が高騰しており、米国世帯の6割が新車を買えない状態となっている」との調査結果もある(1月16日付ニューズウイーク日本版)。
バイデン政権は「トランプ氏よりも中間層を支援してきた」と主張しているが、生活実感の悪化が続いているため、国民の間に「家計に直結する問題に取り組んでいない」との不満が高まっているというわけだ。
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