センバツでまた「不可解選考」 東海地区の“逆転現象”に「理解できない」との声も…なぜ、選考過程を透明化しないのか?

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指導者からも疑問の声

 ただ、繰り返しになるが、最終的な得点差は1点差だ。見方を変えれば、宇治山田商は最終回の詰めの甘さが出て、豊川に逆転を許した一方、愛工大名電は、大差のリードをつけられながらも試合を諦めることなく、1点差まで豊川を追い詰めたと評価することもできる。

 選抜高校野球の選考については数字などで示せる明確な基準はなく、最終的な判断は選考委員に委ねられるとはいえ、「宇治山田商の方が上」と判断した説明を聞いて納得できた人は少ないのではないだろうか。

 実際、筆者は、甲子園出場経験を持つ複数の指導者に、今回の選考結果について、感想を聞いてみた。いずれも納得がいかない様子だった。ある指導者は以下のように、選考委員会に対して、疑問を呈している。

「愛工大名電が選抜に出場できるので騒ぎにはなっていませんが、正直、理解できませんね。決勝で0対10といった大差で愛工大名電が負けていたら、まだ分かりますけど、最終的には1点差ですから。ちょっと穿った見方かもしれませんが、(選考委員会は)『(地区大会の)決勝に進出しても、選抜は当確じゃないんだぞ』と世間に対して言いたいのかなとも思いました。また、聖隷クリストファーの時の選考について、正当化したい意図もあったのかもしれませんね……」

「当落線上の場合は、あまり期待しない」

 2年前にあれだけの問題になりながらも似たような選考が行われているというのはやはり気になるところだ。一方、別の指導者は、こうも話してくれた。

「選抜については、地区大会で優勝して『選考間違いなし』というケースであれば、当然選ばれるつもりで待ちますけど、当落線上の場合は、あまり期待しないようにしています。選手にも絶対的なところまで、勝ち上がれなかったのだから、選ばれなくても仕方がないということも話しますね。一喜一憂して、チームが締まらない方がマイナスですから……」

 裏を返せば、それだけ選抜の選考というのはどう転ぶかよく分からないものであると認識されている。ただ、それに振り回される現場の指導者や選手がいることは確かだ。

 2年前の聖隷クリストファー落選の際には、末松信介文部科学大臣(当時)からも選手への丁寧な説明や会議録の公表などが必要ではないかという話があったが、その後、選考委員会の運営について何か変わったようなことはなく、会議録も公表されていない。

 スポーツに限らず、あらゆる分野で透明性が求められる時代において、少なくとも出場校の選考過程を明らかにする必要があるのではないだろうか。来年以降は、より多くの人が納得できる十分な情報開示と説明が行われることを望みたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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