49年間逃げ続けた桐島容疑者 東アジア反日武装戦線が作成した教本「腹腹時計」に逃亡生活を解くカギが

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自らの正体を知られてはならない

 その桐島容疑者が、晩年までの約40年間を過ごしたのが神奈川県藤沢市。親しい人からは「うっちー」と呼ばれ、銭湯帰りに一杯やることもあれば、ジェームス・ブラウンが大好きで、店で流れている曲に合わせて踊ることもあったという。しかし、保険証など身元を証明するものは何もなかった。

「東アジア反日武装戦線が、1974年3月にまとめた『腹腹時計』という爆弾闘争の教本があります。これは爆弾の作り方を書いただけではなく、都市ゲリラ兵士として闘争 するための心構えや、生活への注意などにもページを割いています。桐島容疑者も必ず目を通しているはずです」(警視庁OB)

 その中で書かれている「あらゆる面で肥大化した都市機能、雑踏を最大限に活用し、隠れみのとしなくてはならない」と説く、ゲリラ兵士としての配慮とはどのようなものなのか。

「自分が住んでいる場所で、極端な秘密主義や閉鎖主義で生活すると、むしろ墓穴を掘る結果となるので、表面上はごく普通の生活をする人に徹する。近所付き合いは浅く、狭くが原則で、最低限、隣人との挨拶は不可欠であることなどが書いてあります。職場でも同様で、メンバーをオルグするためなのか、企業を内部から解体するためか、特殊技能・物資を得るためか、単に生活費を得るためなのか、はっきりするように。あれこれ手を出すべきではないとあります。もし、今回の男が桐島容疑者なら、生活費を得ることに徹していたのでしょう」(同)

 市民社会に、自らの正体を知られてはならない。うまく立ち回って自分の真の姿を見せないことが鉄則であることが強調されている。

「酒については厳しいですね。平常心を失わせ、羽目を外して油断を生じやすくするものとして、最大の敵であると書いてあります。仲間で酒盛りなどもってのほかです。あと、顔を覚えられるので特定の喫茶店は使わない。自分の部屋で作業する場合、深夜まで音をたてない、そして健康の維持も個々人の任務であり責任を持つようにと書いてあります」(同)

 一番大事なのは同志であり、同志以外への警戒と配慮は肉親でも同様だとするが、家族との関係を絶つことまでは求めていない。家族を抱き込む必要もないし、友人についても同様だとしている。

 ちなみに、桐島容疑者の親族は、遺体の引き取りを拒否しているという。

デイリー新潮編集部

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