「いきなり!ステーキ」を手放した一瀬邦夫氏(81)が両国に和牛ステーキ店を開店 本人が自ら厨房に立つ理由

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無給でやっている

一瀬:「和邦」は和牛専門ですから、ペッパーフードサービスとは競業しないと思っています。「いきなり!ステーキ」を始めた10年前は、円高もあり輸入牛は比較的安かった。だけど今は円安でしょう。ものによっては国産牛のほうが安いものもある。そこに着目して和牛専門にしたんです。和牛ステーキの単価は2~3万円で、低価格で出している店はない。うちは5000~6000円で出しています。

――ところが……。

一瀬:始めてみたら厳しい。いくら安くしても、ステーキ屋で和牛を食べ慣れていない方が多いようで、安いと思ってくれないんです。

――両国国技館の正門の目の前という立地はどうなのだろう。

一瀬:正直言って、あまりいい場所とは言えないね。大相撲が開催されている期間は「大相撲観戦弁当(牛肉炙り焼きステーキ弁当:1780円、和牛交配ステーキ弁当:1980円)」を販売したり、観戦後にも寄ってくださるお客さんがいるからいいけれど、そうでないと意外に人通りが少ない場所なんです。でもね、今はネットの時代ですから。

――現在はむしろ外国人客が多いという。

一瀬:日によってはインバウンドが9割を占めることもある。彼らに聞いてみると、ネットでこの店を知ったと言うんです。見てみると、本当に評判がいい。

――和牛を求めて両国に。

一瀬:それが日本人にも広がってくれるといいんですけど。

――繁盛したら、また店を増やすのだろうか。

一瀬:自分の店を持ちたいという従業員がいれば与えます。でも、「いきなり!ステーキ」の時のような、あんなバカなマネはできませんよ。

――81歳となった一瀬氏は、現在も日曜を除いた毎日、忙しい時間帯に厨房に立つ。仕事は趣味だという。

一瀬:だって、収入がない、無給だもの。

――収入ないんですか?

一瀬:和牛を安く提供するため、原価率は70%。腕の良い調理人が4人ほど、私についてきてくれた元社員がいます。だから、お客さんが入ってくれないことには儲けが出ない。繁盛するまで、僕は無給でサポートしていきます。81歳ですけど、彼らと一緒に働いていると元気になるんですよ。

デイリー新潮編集部

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