加齢臭の100倍臭う「ミドル脂臭」の防ぎ方は? 中高年男性のためのスキンケア入門

ドクター新潮 ライフ

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「使い古した油の臭い」

 加齢臭が50代以降の男性で特に顕著になる体臭を表すのに対し、ミドル脂臭は30~40代に発生する体臭を指します。

 ミドル脂臭は「ジアセチル」という成分が原因。ジアセチルは、頭部にある汗腺の一部から分泌される乳酸が頭皮の常在菌により代謝・分解されることで生み出されます。一方で、頭部の皮脂腺から分泌される皮脂は、リパーゼという酵素の働きで代謝・分解され、これにより中鎖脂肪酸が生成されます。この中鎖脂肪酸がジアセチルと結びつくことで、さらに臭いが増幅され、ミドル脂臭となるのです。加齢臭は「枯草のような臭い」と形容されることがありますが、このようなメカニズムで発生するミドル脂臭は「使い古した油のような臭い」がすると言われます。

臭いの拡散力は加齢臭の100倍

 また、加齢臭が主に体幹部や背中から出るのに対し、ミドル脂臭は後頭部付近から発生することが多い。しかも、ジアセチルは口臭の原因成分の1.4倍、足の臭いの原因成分の1.5倍も臭気が強く、さらに臭いの拡散力は加齢臭の100倍ともいわれています。そのため、加齢臭よりも他人の嗅覚に触れやすく、枕などに臭いが残りやすいという困った特徴があるのです。

 このような体臭を抑えるため、30代以降は毎晩の洗髪に加え、朝の洗顔時に洗顔料の泡を使って耳の裏から首筋まで洗うことがお勧めです。さらに、日中も耳の裏から首元にかけて市販の制汗シートやデオドラントシートで優しく拭き取るのも効果的でしょう。この際、顔と同じく“ゴシゴシ”と強く拭き上げないことが大切です。

「人は見かけによらない」と言いますが、一方で、見た目の清潔感が人の第一印象を左右するのも事実。正しい皮膚科学の知識に基づいて顔や髪、体臭にほんの少し気を使うだけで、新たな世界が広がるかもしれません。

樋口彩子(ひぐちあやこ)
D-ISMクリニック東京・皮膚科医。帝京大学医学部卒業後、東京慈恵会医科大学付属第三病院にて初期研修を修了し、同大病院皮膚科学講座に入局。現在はD-ISMクリニック東京で皮膚科一般診療や美容皮膚科診療を行う。 日本皮膚科学会、日本美容皮膚科学会、日本再生医療学会などに所属。

週刊新潮 2024年1月25日号掲載

特別読物「“ずぼら夫”にこそ読ませたい 男のための『スキンケア』入門」より

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