元不登校の通信制高校生たちが「ものすごい成長」を遂げた 「次の子が産みたくなる」奇跡の保育園で何が起こったのか

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前編【「もう一人産みたくなる」奇跡の保育園が、学童保育と劇団を運営する重要な意味】からのつづき

 日本全国で不登校の生徒が増加するのに比例し、通信制高校の人気が急上昇している。

 通信制高校は一般的に「通学」と「在学」に分かれているが、前者であっても全日制高校ほど規律を求められたり、深く他者とかかわったりせずに済む。それゆえ、コミュニケーションが苦手な生徒にとっては気持ちが楽ということで選ばれる傾向にあるのだ。

 現在、通信制高校に通う生徒数は26万人以上。これは、現役高校生の12人に1人が通信制高校の生徒という計算だ。

 こうした不登校の生徒を専門家はどのように見ているのだろう。熊本市内にある心療内科のクリニックで働く高木英人(仮名)は、〈前編〉で見てきたやまなみこども園に3人の子供を通わせてきた精神科医である。同クリニックには、未成年が多数通っており、その中でも不登校と発達障害の診療が目立つという。

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 英人は不登校の子供についてこう話す。

「今の学校のあり方は限界に来ていて、大勢の子供にとって過ごしにくい状況が生まれていると思います。うちの子たちはやまなみこども園で伸び伸びと育てられ、たくさんの貴重な経験をさせていただきましたが、小学校へ上がったら、まったく違った環境に身を置くことになりました。

 園にいた時は自由な思考や表現がよしとされていました。学校でもそう推奨されてはいますが、実際にはルールを守ることなどの管理される部分の比重が高い。それを感じ取る子供たちは自然と委縮してしまい、息苦しさを感じてしまう。また、学校は、いつも同学年との競争を意識しないといけない場でもあります」

 文部科学省は自由、主体性、無競争といった標語を掲げている。だが、学校が旧態依然の体制のまま、アクティブラーニングをしようとか、子供間の競争を失くそうといったところで、教師自身がそれをどうやっていいのかわからないというのが現実だろう。それゆえ、教師は自分が受けてきた昔ながらの教育を子供たちに押しつけることになる。それが今の時代に合わず、子供たちへのプレッシャーになっている現状がある。

学校の空気についていけず不登校に

 英人はこうもつづける。

「うちのクリニックには、学校の先生方も治療に来ていますが、話を聞いて同情することもあります。今の学校の中では、子供たちみんなの学力を上げ、みんなをおとなしくさせなければならない。それができなければ失敗と見なされる。これでは先生も生徒も大変ですよね」

 英人はあるべき関係性を「Good enough mother」という概念を用いて説明する。これは「ほどよい母親」という意味であり、家庭では、完璧な親ではなく、むしろほどほどの親であった方が、子供は自分を追いつめずに、主体性を持って自由闊達に育つという含意がある。

 学校もそれと同じだ。教師も等身大で、よいところもダメなところも見せることが出来る「ほどほどの教師」であれば、それを見た生徒も、それで大丈夫なんだと考える。このため不完全な自分も受け入れて、自分らしくいられるし、教師も「完璧な教師である」という強迫観念から解放される。だが今の学校は、教師も子供も身の置き場がない状況に陥っているのではないかというのである。

 このような学校の空気についていけずに不登校になった子供たちは、家にひきこもり、社交不安を膨らましていく。最初の頃こそ、親は「つらかったら学校へ行かなくてもいい」と声をかけるが、不安と負担は日に日に大きくなっていく。親の動揺が子供に伝わり、両者の関係がより悪化する。

 英人はこれまでそんな事例をたくさん見てきた。もっとも、彼らに希望がないわけではない。その一つが通信制高校だ。

 彼は次のように話す。

「通信制高校には、全日制の高校のようにたくさんの生徒とかかわる機会が少ないから心配と言われる親御さんや進路指導の先生は多くいらっしゃいます。たしかにそういう面はあるかもしれませんが、通信制高校では一部の子供たちの気持ちがかなり楽になるようで、そこからバイトや習い事をはじめたり、趣味の幅を増やしたりする子もたくさんいます」

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