日テレは3カ月張り込み、NHKは現地に行かずパソコンで…対照的だった「北朝鮮」スクープの取材手法

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外貨稼ぎをする北朝鮮の労働者を追う 根性の張りこみ取材

 日本テレビ「真相報道 バンキシャ!」(1月21日)は、北朝鮮の極秘活動をカメラが捉えることに成功していた。

 核とミサイル開発に突き進む北朝鮮は、莫大な資金を得るため外貨を稼ぐ部隊を海外に派遣しているとされるが、その実態は明らかになっていない。外貨稼ぎは国連の制裁で禁じられている。

 今回、日本テレビは、中国・北京のワンジン地区にある外貨稼ぎの拠点を特定した。あちこちにハングル表記があり、韓国の食材やファッション店が密集するコリアタウンのマンションの内に、北朝鮮の拠点があったのだ。

 男たちが潜伏するマンションの近くに取材班が張りこむこと3カ月――。窓から撮影していると、上半身裸の複数の男たちが共同生活をしていることがわかってきた。時にスーパーへ買い出しにも出ていたが、買い物にも慣れていないようだ。どうやら彼らはIT技術者であるらしいことも判明する。セールス資料を入手するとそこには「あらゆるハイテク製品を最短期間・世界で最安・最高の技術レベルで開発することを約束します」と強気な売り文句がある一方、会社名や国名は記されていない。製品を売り、外貨を獲得しているわけである。

 中国人男性との商談の様子も映像で記録できた。

(中国人男性)
「いちばん自信がある製品は?」

(監視役)
「顔で…開いて…」

(中国人男性)
「ああ、顔認証。自動的にドアが開くやつか。近いうちに会社の資料を送ってくれるかな。私に製品化をまかせてくれる? 大事なのは儲かることだ。一緒に金を稼ごうじゃないか」

 NHKのオシントとは対照的に、日テレの取材班が行ったのは、拠点と思しきマンション周辺での隠し撮りだ。IT技術者たちの動きを映像と音声で記録するという、伝統的な調査報道の手法といえる。

 身元を偽装した北朝鮮のIT技術者が、日本の自治体で仕事を請け負った事例も報告されている。拠点は頻繁に変わるため、事実上は野放しになっている実態があるという。こうしたやりかたで得た外貨が、ミサイルなどの兵器開発の資金源になっているのであれば、国連の経済制裁は抜け穴だらけだということがわかる。

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