イチロー氏(50)“満票殿堂入り”が絶望的な「日本人だから」ではない理由 「人種」でも「人格」でもない…松井秀喜氏が備えていたモノ
ステロイドの時代に“原点回帰”の功績も
アメリカの野球殿堂は1月24日に今年の殿堂入りを発表し、レンジャーズなどでプレーしたスラッガー、エイドリアン・ベルトレ氏、強打の元捕手ジョー・マウアー氏、ロッキーズ一筋で通算2519安打のトッド・ヘルトン氏の3人を選出した。全米野球記者協会に10年以上在籍する記者による投票で、史上初の野手での満票選出がなるかどうかが注目されていたベルトレ氏は95.1%で、わずかに届かなかった。
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来年はいよいよ日本人初の野手のメジャーリーガーであり、主にマリナーズで「安打製造器」として活躍したイチロー氏(50)の番である。シーズン最多262安打の大リーグ記録を樹立するなど通算3000安打の金字塔を打ち立て、米野球最高の栄誉を、資格1年目に日本人として初めて手にすることが確実視されている。焦点はベルトレ氏が逃した史上初の偉業の成否だが……。
投票経験がある記者を含め、多くの米球界関係者からは「イチローでも満票は難しいだろう」との声が相次ぐ。その背景を探ると――。
今回、得票率が断トツだったベルトレ氏は現役時代に通算3166安打、477本塁打を放っている。いずれもイチロー氏を凌ぐ数字で、3000安打はドミニカ共和国出身選手としては初の快挙だった。MVP1度、オールスター戦選出は4度、シルバースラッガー賞は4度、ゴールドグラブ賞は5度と輝かしい実績を誇る。
これに対し、イチロー氏は、MVPがベルトレ氏と同じ1度で、オールスター戦は10度、シルバースラッガー賞は3度、ゴールドグラブ賞は10度と勝るとも劣らない。これらの受賞歴に加え、「ステロイドが蔓延し、ホームランによる大味な野球が全盛だった時代に、野球の原点と言えるスピードを持ち込んだプレーは鮮烈でした。凡打を安打にする俊足のほかにも(レーザービームと呼ばれた)強肩が武器で、大リーグに野球本来のスリリングな魅力を取り戻させた足跡は非常に意義深いことだったと思います」(米大手マネジメント会社の代理人)。
現代のメジャーで、日本人選手の道を切り開いたのは1995年にドジャース入りした野茂英雄氏だが、渡米した2001年当時、通用するのは至難の業とされた野手でのパイオニアは紛れもなくイチロー氏である。満票でも不思議ではないように感じられる。
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