センバツ、高野連の「不可解選考」にファンも困惑…不運な落選に泣いたチーム列伝
“準優勝校”を差し置いて、“準決勝敗退校”が出場
第96回選抜高校野球の出場32校が1月26日に決定する。トーナメントの一発勝負で代表校が決まる夏の甲子園に対し、センバツでは直接対戦していないチームの実力が比較されるなど、不透明な部分も多く、過去には不運な落選に泣いたチームも少なくない。【久保田龍雄/ライター】
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まず記憶に新しいのが、2022年の聖隷クリストファーである。同校は前年秋の東海大会初戦で、エースで主将の弓達寛之が右肩骨折で緊急降板するアクシデントに見舞われながら、チーム一丸となってその穴を埋め、準々決勝の中京戦で2点差、準決勝の至学館戦では3点差をいずれも9回に執念の大逆転。決勝では日大三島に3対6と逆転負けしたものの、東海地区の2枠は、日大三島とともに静岡県勢が独占するものとみられていた。
ところが、1月28日に行われた選考委員会では、準決勝で日大三島に5対10で敗れた大垣日大が2校目に選ばれ、聖隷クリストファーは補欠校になった。東海大会の準優勝校が落選するのは、1967年の名古屋電工(現・愛工大名電)以来、55年ぶりの珍事だった。
準優勝校を差し置いて、準決勝敗退校が選ばれた理由は、「甲子園で勝てるかどうか」を判断基準とし、東海大会で好投手を擁する静岡、愛知県1位校の享栄を連破した大垣日大のほうが「投打両面で個々の能力が高い」とされたからというもの。両校は直接対決していないのに、「大垣日大が上」とされた理由は説得力に欠け、「地域性を考え、静岡から2校は避けた」と説明したほうがまだましと感じたファンも多かったはずだ。
ダルビッシュからも疑問の声
この選考結果は、「不可解選考」とネットなどを中心に大きな反響を呼び、パドレスのダルビッシュ有もツイッター上で「『個人の力量に勝る大垣日大』って。それならせめて聖隷クリストファー高を選考した上で特別枠で大垣日大高を選考するべきではないんですかね?」と疑問を投げかけた。
上村敏正監督は「高野連には抗議文などを出すつもりはない」と落選を受け入れたものの、同校OBを中心に「出場校を1校増やし、33校目の出場校として聖隷クリストファー校を選出してほしい」という趣旨の署名活動が始まり、3日目で1万人の署名を集めた。
だが、主催者側は2月10日、「去る1月28日に決定した第94回選抜高等学校野球大会出場32校と補欠校は最終のもの」(日本高野連会長で、選考委員会委員長の宝馨氏)と明言し、33校目は幻と消えた。気持ちを切り替え、夏を目指した同校ナインだったが、県大会準決勝で敗退し、甲子園初出場の夢を叶えることはできなかった。
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