本業は広告代理店のサラリーマン、田中角栄を描いた舞台「闇の将軍」演出家が語る「角栄の功罪」

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“政治家じゃなくて小劇場の役者にしか見えない”

 一連の舞台で角栄を演じた狩野和馬(46)、大平正芳役の内田健介(52)らは、「仕草から話し方までそっくり」と評判に。それでも中村は「実在の政治家を演じる難しさがあった」と振り返る。

「初演の稽古では、“政治家じゃなくて小劇場の役者にしか見えない”と僕が怒って、帰ってきたことも。その後、俳優たちがミーティングをしたようで、翌日には見違えるほど良くなっていましたね」

 令和2年は、角栄の故郷・新潟県でも公演を行った。

「地元では非常に多くの方に喜んでいただけました。角栄さんの後援会『越山会』の会員だったというご老人たちが見に来られ、終演後に“良かった”としみじみ握手をされたこともありました」

本業は広告代理店のサラリーマン

 昨年は75歳で死去した角栄の没後30年だった。“今太閤”と称賛される一方で“金権政治家”と唾棄された角栄の生前の功罪を巡っては、いまも毀誉褒貶(きよほうへん)が激しい。

「やると決めたら、リスクを顧みずに実行する決断力、判断力はすごい。“功”は日中の国交回復を実現するなどの外交でしょう。北方領土問題の解決を目指してモスクワにも行っていた。一方の“罪”は悪名高い金権政治よりも、権力の二重構造を作ったことだと思います。誰が本当のトップか分からない、現在の自民党の構造を作った罪は大きい」

 中村の本業は大手広告代理店に勤務するサラリーマン。9年にわたり、二足のわらじで角栄の舞台に取り組んできた。

「なかなか結論が出ない会議での腹の探り合いや、取り引き先との駆け引きなどが身に染みているからこそ、臨場感に富んだ場面を作り出せているのかな」

 次回公演は6月の予定。不動産の所有者を装って多額の代金をだまし取る、地面師が題材の社会派劇という。

週刊新潮 2024年1月25日号掲載

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