本業は広告代理店のサラリーマン、田中角栄を描いた舞台「闇の将軍」演出家が語る「角栄の功罪」

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 舞台の世界でも田中角栄が話題だ。東京・新宿を拠点に活動するシアターカンパニー「JACROW」が、角栄の半生を描いた「闇の将軍」4部作と、企業戦士の物語「経済3篇」で第58回紀伊國屋演劇賞の団体賞を受賞した。

 JACROWは平成13年に“大人が楽しめる小劇場”をコンセプトに結成された。作と演出を担当した中村ノブアキ(56)が、人間・角栄の魅力を語った。

「角栄の舞台化は、10年ほど前に書店で早野透氏の『田中角栄 戦後日本の悲しき自画像』という評伝を手にしたのがきっかけです。それまで“悪い政治家”との認識だったのが、読後はロッキード事件で逮捕・起訴された汚職政治家とか、いわゆる金権というイメージとは異なる人間味溢れるキャラクターに魅了されたんです。これは面白い芝居にできると直感しました」

「当初は1作で終えるつもりだった」

 初演は平成28年で、土建業で身を起こした角栄が政界に進出し、39歳という若さで大臣に就任するまでを描いた「夕闇、山を越える」だった。

「当初はこの1作だけで終えるつもりでした。ところが“この舞台で政治に興味を持った”とか“続きを見たい”といった声が寄せられまして。作り手冥利に尽きる反響でしたので、シリーズ化に踏み切りました」

 2年後の平成30年には、福田赳夫との角福戦争に勝利して首相の座に上り詰めるまでを描いた「宵闇、街に登る」を上演。さらに2年後の令和2年には、ロッキード事件で自民党を離党した後も“目白の闇将軍”として君臨した姿を描いた「常闇、世を照らす」を手がけて話題をさらった。

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