【光る君へ】視聴率は「どうする家康」より苦戦…NHKが低視聴率番組の要因を素直に語らない理由

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NHKは自己批判を避けている?

 最近のNHKは番組内容や視聴率面の自己批判を避けているようにも見える。視聴率が低く、悪評も少なくなかった「どうする家康」は上級幹部が「素晴らしかった」と総括した。

 やはり不満の声が聞かれた大晦日の「紅白歌合戦」についても、稲葉延雄会長(73)が、「『楽しかった』とおっしゃっていただける方が多かった」と高く評価した。

 しかし、NHKに寄せられる視聴者の声は絶賛ばかりではない。意見の一部はウェブ上で見られるようになっているが、それを見ると、批判も数多い。だが、局側が積極的に批判意見を公表しようとしているとは思えない。

 例えば、意見をまとめた2023年の「月刊みなさまの声10月号」を見ると、連続テレビ小説「ブギウギ」には好評意見が55件寄せられたが、厳しい意見はその3倍以上の176件あった。この結果は大半の視聴者が知らなかっただろう。

 NHKは法制度上、政府・自民党に睨まれない限りは安泰。現在の稲葉会長は岸田文雄首相(66)の信頼が厚いと言われる。前田晃伸前会長(79)は故・安倍晋三元首相と懇意だった。ともに強力な後ろ盾である。

 ただし、NHKが1つだけ怖れているとされるものがある。世論だ。これは政府・自民党でもどうにもならない。仮にスクランブル化などの任意契約論を世間の多くが強く望むようになったら、厄介なことになる。

世論対策で自己批判を避けている?

 そうでなくてもテレビを持たない若者が増えているため、ネット課金の問題がある。もしも本当に自己批判を避けているとしたら、その理由は世論対策なのかも知れない。しかし、そうであるなら、逆効果に違いない。

 近年、一般企業ではマイナス情報をオープンにしたほうが結果的にプラスになるという考え方が浸透しつつある。透明性が高くフェアな企業などと評されがちだからだ。

 逆に一般企業の中には外部の組織や個人に報酬や特権を与え、都合の良い世論をつくろうとするところもある。しかし、バレたら信用を一気に失う。無論、テレビ局もそうだ。

 NHKも低視聴率番組の自己分析や番組への批判をざっくばらんに発表したほうがいいと思う。そのほうが同局も番組も身近に感じるようになるはずだ。

「光る君へ」なら、「合戦のない平安時代中期は厳しいとも予想していたんですけど、やっぱり出だしの視聴率は苦戦しましたね。でも、まだ3回。まひろが『源氏物語』を書き始めるころには話題沸騰ですよ」などと、砕けた分析や読みを出してもいいのではないか。

 実際、「光る君へ」は走り出したばかりである。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。放送批評懇談会出版編集委員。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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