ジブリの作戦勝ちか…アメリカ人には難解な「君たちはどう生きるか」がGG賞を受賞した特殊事情

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閉鎖的かつ独善的な体質にメスが

「GG賞は1943年に創設されました。毎年、授賞式のTV中継は、アカデミー賞やグラミー賞とならんで高視聴率を稼ぐことでも知られています」(芸能ジャーナリスト)

 主催してきたのは、「ハリウッド外国人記者協会」(HFPA)なる「非営利団体」だ。

「HFPFは、アメリカの映画・TV業界の情報を発信する、ロサンゼルス在住の“外国人”ジャーナリストの団体で、日本人会員もいます。その彼らが選出したベスト・コンテンツを、年に一回、世界へ紹介するのがGG賞です」

 ところが、このHFPFとGG賞は、歴史こそ長いものの、近年は問題山積だったという。

「俳優のブレンダン・フレイザーや、大物女優のスカーレット・ヨハンソンがセクハラ被害を訴えたのをきっかけに、HFPFの“闇”が続々と暴露され始めました。非営利団体のはずなのに会員が高額の“ギャラ”をもらっていたり、ロケ取材で接待を受けていたり……。もっとも批判を浴びたのが、黒人会員がゼロだった点です。しかも会員数が、その時点で80人ちょっとしかいなかった。アカデミー賞が約1万人の会員で運営されているのに比べてあまりに差がある。その閉鎖的かつ独善ぶりに、多くの俳優がボイコットを表明。トム・クルーズは過去の受賞を“返還”しました。Netflixやamazonなどの配信系も参加を拒否。NBCは授賞式の放映を中止。2022年は、TV放映なしの内輪イベントと化したのです」

 さらに、アジア系への“軽視”にも批判が寄せられた。

「2020年の映画『ミナリ』は、アメリカへ移住した韓国系一家の苦闘を描く素晴らしい作品でした。監督は韓国系ですがアメリカ育ち。製作会社もいまや飛ぶ鳥を落とす勢いの〈A24〉社という、独立系スタジオ。つまり、まったくの純アメリカ産映画なんです。なのにHFPFは、セリフの大半が英語でないとの理由で、GG賞では作品賞などの主要部門から外し、外国語映画賞に分類した。アカデミー賞では作品賞など6部門にノミネートされ、助演女優賞を獲得した作品なのにです。実はあの『パラサイト 半地下の家族』も、おなじ目にあってるんです」

 その後、HFPFは、会員数や国籍を拡大し、黒人会員を受け入れるなど、一応の“改革”は進めたが、批判は容易におさまらなかった。結局、HFPFは解散してしまうのだ。

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