ジブリの作戦勝ちか…アメリカ人には難解な「君たちはどう生きるか」がGG賞を受賞した特殊事情
作品への評価は百家争鳴
しかし、日本以上に北米では大ヒットしているのだから、GG賞受賞は、単なる“作戦勝ち”とはいいきれないはずだ。しかも日本では賛否両論となっている“難解作品”である。たまたま、筆者の周囲で観ていた3人に、感想を聞いてみた。
「まあまあ、面白く観ました。母親を失って気持ちが不安定になっている少年が、そこを突きぬけて、すこし大人になるまでを描く、成長ファンタジーの王道だと思いました。ただ、どこか『千と千尋の神隠し』の少年版のようで、あまり新鮮味は感じませんでした。ヒントとなった小説がジョン・コナリーの『失われたものたちの本』らしいと知ったので、読んでみたのですが、ドンピシャで驚きました。吉野源三郎よりも、いっそ堂々とコナリー原案といってもよかったような気がしました」(雑誌編集者/男性/40歳代後半)
「何が何だかわかりゃしない。てっきり吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』の精神を生かした話かと思いきや、伯父さんが出てくる点だけが一緒で、まったく関係ない。タイトルを借りたそうだけど、なぜそんな必要があるの。まるで漫画版がベストセラーになったから、そのタイトルに便乗したように思われても仕方ないんじゃないの。わかりにくいところはご自由に解釈してください――ってことなんだろうけど、おカネ払ってるんだから、ちゃんと白黒ハッキリさせてよ。それより、宣伝費ゼロだったわけだから、その分、入場料を安くしてもらいたかったよ」(商社嘱託勤務/男性/60歳代後半)
「私は、ジブリ作品はすべて観てきた大ファンで、何度か雑誌に紹介記事も書いてきました。その立場からいうと、これは、パンフレットにも明記されているように、少年時代に母からもらった吉野原作のタイトルを借り、『これまで描いてこなかった自身の少年時代を重ねた自伝的ファンタジー映画』に尽きると思いました。冒頭の火事のシーン、老婆の集団、多くの鳥類、塔の崩壊……たぶん、宮崎監督の心象風景だと思うのですが、どれも、過去作のどこかの場面をもとにした集大成のように思えました。高畑勲さんへのオマージュのような場面もあった。これは長年のジブリ・ファンのための、きわめて独特な作品ではないでしょうか」(フリーライター/女性/30歳代後半)
まさに百家争鳴だが、それほど個性的な作品が、なぜアメリカで由緒ある賞を受賞できたのだろうか。
「今回は、ある意味、とても運がよかったと思います。というのも、もしかしたら今年はもう、GG賞は廃止になるのではないかと囁かれていたんです」(芸能ジャーナリスト)
いったい、GG賞とは、どういう賞なのだろうか。
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