【冬ドラマ】個人視聴率2位は「グレイトギフト」、1位は…今後大化けしそうな作品は

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見込み違いか…低視聴率の恋愛ドラマ

 昭和期からドラマの世代ターゲットは存在し、全世代型のほうが珍しかった。世帯視聴率では狙った世代に受け入れられているかどうかが確認できなかっただけだ。

 例えばフジテレビのヒット作「スケバン刑事」(1985年)は完全に10代向け。筆者の周囲の大学生すらほとんど観ていなかった。今は消えた午後7時台のドラマはほぼ全てが10代向けだった。

 今の恋愛作品も若者向け。だからドラマ界は世帯視聴率の良し悪しを気にも留めない。もともと世帯視聴率は使わない上、高齢者が受け入れないと数字は決して上がらないためだ。

 それでも今年の冬ドラマには、局側にとって見込み違いと思われる低視聴率の恋愛作品がある。1.9%(17日放送、第1回)で12位のフジ「婚活1000本ノック」(水曜午後10時)である。婚活がテーマでありながら、若い女性のF1層が0.6%しか観てないのは痛い。100人に1人以下しか観ていない。

 高齢者が観ないと上がらない世帯視聴率は当然低く、3.6%。原作の人気小説の面白さが再現できていないからだ。「3時のヒロイン」の福田麻貴(35)にとっては初主演作なので、彼女をカバーする強力な助演者が不可欠だが、その存在が見当たらない。

大化けしそうな「厨房のありす」

 5位は関西テレビが制作し、フジ系で放送されている「春になったら」(月曜午後10時)の4.2%(15日放送、第1回)。春になったら、奈緒(28)が演じる娘は結婚する一方、木梨憲武(61)が演じる父は膵臓がんで死ぬ。こう聞くと重たく湿っぽい作品になってしまいそうだが、違う。むしろ笑える。しみじみする。

 NHK連続テレビ小説「まんぷく」(2018年度後期)などを書いてきた福田靖氏の脚本が光る。“死が絡む親子もの”は若い人に敬遠されるというのが通り相場だが、10代のT層もよく観ていて、数字は2.6%と高い。「グレイトギフト」の1.7%をかなり超えている。

 個人視聴率は3.6%(21日放送、第1回)だが、大化けしそうなのが、日テレ「厨房のありす」(日曜午後10時半)。コアは3.6%、T層が3.2%、F1層が3.8%といずれも高い。「さよならマエストロ」の同3.5%、同2.3%、同2.9%を全て上回っている。

 門脇麦(31)が演じる主人公は天才的な料理人で、図抜けた化学の知識を持つが、自閉スペクトラム症の特性から頑固でこだわりが強く、コミュニケーション能力に欠ける。大森南朋(51)が扮する父にも心に傷や弱さがある。ほかの人物たちも長所と短所を併せ持つ。もっとも、観ている側もみんなそうだろう。

 人は誰でも弱いという前提が物語の根底にある。この世界観は映画や演劇ではよくあるが、ドラマではほとんど存在しなかった。新しい。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。放送批評懇談会出版編集委員。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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