“CA出身の新社長”で株を上げた日本航空と、CAをTikTokで踊らせる全日空… 両社のイメージに変化の兆し

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 この1月は、日本航空という我が国の航空業界の一角を担ってきた会社にとって大きな転機になった。1月2日に羽田空港で起きた海上保安庁機との衝突事故で乗員乗客379人全員の命を救った“奇跡の脱出劇”によって、同社の安全面での取り組みはテレビメディアなどで高く評価された。【水島宏明/ジャーナリスト・上智大学文学部新聞学科教授】

 炎上する機中で乗客がスマホなどで撮影していた動画を元に、テレビ各社は「18分間の脱出劇」などとして検証する特集を放送した。とりわけ客室乗務員(CA)の冷静な姿勢に焦点を当てていたが、その際に解説者として登場したのも、日本航空の元CAたちだった。

 海外のメディアで“奇跡”と称賛された今回の脱出劇について、「けっして奇跡ではない」と日頃の訓練の賜物であることを、複数のテレビ番組で強調したのが元日本航空CAの江上いずみさんだ。

 江上さんによると、CAは普段の「サービス要員」としての顔と緊急時の「保安要員」としての2つの顔を持つという。特に保安要員としての役割は日頃の訓練で厳しくチェックされ、クリアできないと乗務ができない仕組みだという。

 江上さんは1月5日のテレビ朝日「スーパーJチャンネル」でも、脱出劇が成功したポイントを指摘した。

(1)パニックコントロールでCAがうまく対応
(2)非常扉を開く判断…8つの非常扉のうち最後尾のCAは機長に連絡がつかないなかで自分の判断で開けた
(3)荷物を置いた乗客との協力…自分の荷物を運び出そうとする乗客に持たないで逃げることを呼びかけて乗客たちが呼応した 

 また江上さんは、CAが「サービス要員」から「保安要員」モードに変わるとどうなるかを、1月5日のTBS「ひるおび」のスタジオ生放送で実演して見せた。

(サービス要員として、飲み物を渡す際にはアイコンタクトをしっかりと丁寧な言葉づかいで)「お待たせいたしました」

 非常に柔らかい声色だ。

 ところが突発的な事故が起きた時に一変する。

(保安要員として自分もケガをしないように衝撃防止姿勢をとって)「頭を下げて! Heads Down!」

 大きく、通る声でスタジオ中に届くように叫んだ。急に声が大きくなり、思わずドキリとさせられるような実演だった。

 江上さんは筑波大学客員教授の肩書きを持つが、日本航空のCAとしてチーフを経験したキャリアを活かし、現在は自ら設立した「グローバル・マナー・スプリングス」という団体で講師などを務めている。そのジャンルは実に多彩だ。話し方教室、マナー教室、リーダー研修、マネジメントなど。

 江上さんと同様、テレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」に登場した香山万由理さんも、やはり日本航空でCAのチーフを務め、現在は「ファーストクラスアカデミー」という団体で代表理事として活躍している。NHKの「クローズアップ現代」に登場した山下輝江さんも、日本航空でCAのチーフを経て、研修や転職コンサルタント、話し方教室の講師を務めている人物だった。皆さん、CAのチーフとしての経験を、危機管理やリーダー育成、マネジメントなどに活かしている印象がある。今回の“奇跡の脱出劇”をめぐるテレビ報道では、日本航空のCAたちの堅実なイメージを強調することになった。

 一言で表現するならば、日頃の訓練に忠実に組織的な働きができ、場合によっては臨機応変に自分で判断して行動できる集団というイメージだろうか。

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