「コスパ日本一」に輝いた意外な“関東の農業県”とは? カリスマ農家が明かす「常に二番手の産地」が勝てた理由
産地間競争に負けた過去
澤浦さんが拠点とする昭和村は、群馬の中でもキャベツやレタスといった野菜の大産地として知られる。その農業産出額は2006年に92億7000万円だった。それが21年には倍の188億円に達したと推計されている。「昭和村が強くなったのは、産地間競争に負けたから」と澤浦さん。いったいどういうことか。
「昔の産地間競争で、レタスは茨城と長野に負けました。キャベツは同じ群馬の嬬恋村に負けたでしょ。常に二番手の産地なんです」
国内の産地に負けただけではない。かつて栽培が盛んだったアスパラガスは、1985年のプラザ合意をきっかけに円高となったことで輸入品に押され、海外の産地に負けた。
「負けに次ぐ負けをずっとやってきたんです」
そんな二番手の産地が反転攻勢に出たきっかけが、民間発の契約栽培だと澤浦さんは指摘する。まず村内の卸売業者が都内の大手スーパーに卸売市場を介さずレタスを納めるようになり、ほかのスーパーや作物へと拡大していった。
昭和村には高速道路・関越自動車道のインターチェンジがあり、東京の練馬インターチェンジまで80分ほどで野菜を輸送できる。そんな地の利を生かし、鮮度の高い野菜を都内に供給する生産基地となった。
量では1位の産地にかなわない。けれども、小売りや中食・外食といった実需者の要望に合うものを直接届ける方法で、産地としての価値を高め、農業産出額を伸ばしてきたのだ。
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