「コスパ日本一」に輝いた意外な“関東の農業県”とは? カリスマ農家が明かす「常に二番手の産地」が勝てた理由

ビジネス

  • ブックマーク

モスバーガーとの契約栽培から人気高まる「ミールキット」まで

 澤浦さん率いる野菜くらぶも、まさにそうだ。1990年代に地元の有機農家を束ね、モスバーガーを展開する株式会社モスフードサービス(東京都)とレタスの契約栽培を始めた。いまや取引先は外食チェーンのほかに生協、小売店など多岐にわたる。年間を通じて出荷するため、青森や長野、静岡などに出荷センターや、連携する仲間の農場を持つ。同社に出荷する農家は全国に点在する。

 2010年にグループで20億円だった売上は50億円に達した。グループ企業で澤浦さんが代表を務める農地所有適格法人・グリーンリーフ株式会社(昭和村)は目下、約25億円を投じて8000平方メートルの敷地に巨大な工場を建設中だ。この工場は「ミールキット」といった加工品や総菜を製造し、年間25億円を稼ぎ出す見込みである。

 ミールキットは食材とレシピがセットになっていて、時短調理をしたいという需要の高まりとともに市場が急拡大してきた。同社は鮮度の高い野菜をカット、包装したミールキットを製造・販売している。これまで、既存の漬物工場を夜間だけ使うことで製造してきた。

「顧客からのさらなる要望がとても大きくなっている。潜在的な要望も大きく、今の生産体制では応えきれない。工場を新設することでマーケットの要求に応えていきたい」

 澤浦さんが向き合うのは、あくまで市場の需要である。

 農業では、予算の投下が多い作物ほど、市場以外に目配りすべき要素が多くなる。とくに稲作は、規模が大きくなるほど収益に占める補助金の割合が高まる。だから、大規模な稲作農家ほど行政の動きに敏感だ。

 かたや、群馬で盛んな野菜と畜産は、コメに比べて補助金の投入が少ない。

「行政がこう言っているからこうしないといけない……という感覚はないですね。県内の優秀な農家に話を聞いても、行政の方針を鵜呑みにするのではなく、自ら経営を切り拓いている人が多いです」

次ページ:産地間競争に負けた過去

前へ 1 2 3 4 次へ

[2/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。