日本のシティ・ポップに多大な影響を与えたマリーナ・ショウが死去 来日時に何を語っていたか

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観客の数は問題ではない

 このアルバムはなぜ半世紀以上にわたって世界中で聴かれ続けているのか――。マリーナに聞いた。

「レコーディングに集まってくれたメンバーが素晴らしかったことでしょう。彼らは、私のアルバムに限らず、どんなときでも、どんなセッションでも、ベストを尽くしている。何万人ものお客さんがいても、たとえ5人しか聴いていなくても、最高のパフォーマンスをする音楽家たち。私はメンバーに恵まれたの」

 さらに、プロデューサーの名前をあげた。

「作品は、つくるプロセスが大切。『フー・イズ・ジス・ビッチ、エニウェイ』のプロデュースを手掛けたのはベナード・アイグナー。彼とはレコーディングに入る前に何度も何度も、長い時間をかけて話し合った。音楽のことも、そのほかのことも語りつくした。その時間が作品を濃厚にして、音楽をスピリチュアルにもした。だからこの作品は長く聴いてもらえているのよ」

 このインタビューのとき、マリーナの血肉になった音楽についても聞いた。リスナーとしての彼女がどんな音を聴いて、歌に反映させてレジェンドになったのかを知りたかった。

 彼女は“ソウルの女王”アレサ・フランクリンの『スパークル』、“ゴスペルの父”アンドレ・クラウチのベスト盤、“ソウル・シスターの元祖”シスター・ロゼッタ・サーブの『ゴスペル・トレイン』、“ブラザー・レイ”レイ・チャールズの『ア・マン・アンド・ヒズ・ソウル』などをあげた。レジェンドの音を聴いて、彼女自身もレジェンドになった。

 名盤『フー・イズ・ジス・ビッチ、エニウェイ』をオリジナル・メンバーの演奏で体験できた日本のオーディエンスは幸せだった。

神舘和典(コウダテ・カズノリ)
ジャーナリスト。1962(昭和37)年東京都生まれ。音楽をはじめ多くの分野で執筆。共著に『うんちの行方』、他に『墓と葬式の見積りをとってみた』『新書で入門 ジャズの鉄板50枚+α』など著書多数(いずれも新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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