WHOが恐れる「疾病X」の出現 阻止するための有効策とは

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機能獲得実験はなぜ「人気」なのか

 機能獲得実験の目的はパンデミック予防や治療薬の開発のためだと言われているが、実際に役だった例は皆無に等しい。それでも世界の研究者たちが危険な機能獲得実験に手を染め続けているのには理由がある。

 機能獲得実験は半年以内に成果が得られ、成功確率は100%に近い。このため、論文が書きやすく、研究予算の獲得も容易だからだ。

 気になるのは、機能獲得実験を実施する研究者の安全管理に関する意識の低さだ。

 前述の中国の研究チームについても、専門家の間では「ウイルスが安全に処理されたかどうかを懸念している」との声が上がっている。

 新型コロナウイルスを漏洩させた疑いがある武漢ウイルス研究所は、開所直後の2017年から安全管理上の懸念を指摘されていたが、「中国ではその後も安全管理に関する改善が行われていないのではないか」という不安が頭をよぎる。

危険なウイルスの漏洩リスクは上昇

 研究所における安全管理の不備が、中国にとどまらない状況も深刻だ。

 新型コロナのパンデミックが始まった2020年から、英国の研究所で発生した事故または漏洩事案は年平均で42件だった。2010年から2019年までの年平均(28件)と比較して1.5倍に上昇している(1月8日付ZeroHedge)。

 機能獲得実験で生まれた危険なウイルスが研究所の外部に漏洩するリスクは、ますます高くなっていると言っても過言ではないのだ。

 WHOが機能獲得実験に監視の目を向けない限り、疾病Xの出現はくい止めることができないのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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