震災から10日後の珠洲市 福祉避難所の不足、水不足で「風呂桶に雪を詰めて……」

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あまりのことに涙も消え……

「昨日やっと風呂に入れたんですよ」と話す、大間玲子さん(62)は100歳の母や長女ら6人で暮らしていた。

「のんびりテレビを見ていたら揺さぶられて飛び出した。母は何とか施設のショートステイに頼んで預かってもらっています」などと話してくれた。ところが、別れ際に漏らした話に言葉を失った。

 孫や義理の娘を亡くしたという。

「元旦なので、孫たちが息子のお嫁さんの実家に集まっていた。夕方に大きな揺れが来て、警察官の息子はすぐに珠洲署に向かおうと家を飛び出したら、直後にすごい音がしたそうです。振り返ったら、あっという間に土砂崩れで家が消えていたと息子から聞きました」(大間さん)

 あまりのことに涙も枯れてしまったのか。想像を絶する肉親の悲劇を大間さんは比較的淡々と話したことが印象的だった。葬儀に備えて自宅に取りに行った礼服を持っていた。

 亡くなったのは石川県警珠洲署の警備課長の大間圭介さんの妻のはる香さん(38)、長女優香さん(11)、長男泰介君(9)二男湊介君(3)。さらにはる香さんの両親と春香さんの兄の妻が亡くなっている。合計7人が一度に亡くなったのだ。彼らは金沢市で荼毘に付されたという。

能登半島地震 2度目の被災で「もう輪島には住めない」避難生活者の本音】に続く

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に「瓦礫の中の群像―阪神大震災 故郷を駆けた記者と被災者の声」(東京経済)、「サハリンに残されて」(三一書房)、「警察の犯罪――鹿児島県警・志布志事件」(ワック)、「検察に、殺される」(ベスト新書)、「ルポ 原発難民」(潮出版社)、「アスベスト禍」(集英社新書)など。

デイリー新潮編集部

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