渦巻く嫉妬で「源氏物語」よりドロドロ… 「光る君へ」を最高に楽しむ鑑賞法を伝授

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居場所を得る代わりに憂鬱感とむなしさが

 紫式部は、「こんなにもおっとり者と見下げられてしまった」と思うものの、「これこそ私が望んだこと」とも言い、彰子中宮にも、

「そなたとはこんなに打ち解けて会うことはあるまいと思っていたのに、人よりずっと仲良くなった」

 という仰せを頂いたと記している。

 こうして紫式部は、宮仕えで居場所を得た。その代わり、恒常的ともいえる憂鬱(ゆううつ)感とむなしさを感じる結果となった。

 弟(兄)に先んじて漢文を覚えるほどの頭脳、彰子に漢籍を進講するほどの知識の持ち主がバカに徹していたのだから、無理もない。

 何かと並び称せられる二人の才女は面識はなかったとされているが、嫉妬を含めた彼女たちの感情が、大河ドラマではどう描かれるのか、楽しみである。

大塚ひかり(おおつかひかり)
古典エッセイスト。1961年横浜市生まれ。早稲田大学第一文学部日本史学専攻卒業。個人全訳『源氏物語』全6巻(ちくま文庫)、『本当はエロかった昔の日本』(新潮文庫)、『女系図でみる驚きの日本史』『女系図でみる日本争乱史』『毒親の日本史』(以上、新潮新書)、『やばい源氏物語』 ( ポプラ新書)など著書多数。

週刊新潮 2024年1月18日号掲載

特集「『紫式部』の心の闇とは…『源氏物語』よりドロドロ NHK大河『光る君へ』の『嫉妬』と『階級』」より

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