「牛乳はアンチエイジング飲料」「自家製お酢ドリンクが効果的」 意外に大事な「飲み物健康術」

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「お酢ドリンク」

 さらに、刺激の面から個人的にお勧めしている飲料が「お酢」です。酢は調味料のイメージが強いかもしれませんが、“健康飲料”として、もっと普及してもいいのではないかと考えています。

 その理由は、まずはやはり酸味や香りが強いので、大事な会議の前で集中力を高めたい時や、シャキッとしたい時に適していることです。それだけでなく、酢の酢酸は、同じ酸でも清涼飲料水に使われることが多く防腐剤の役割を果たすリン酸と違い、生活習慣病予防効果などがあり、健康的でもあります。

 黒酢飲料などが市販されていますが、それほど種類が豊富なわけではありません。従って、もし家庭で飲むのであれば、普通に台所にある調理用の酢を水道水で薄めて、少しハチミツを加えればおいしく飲めます。1杯あたりの値段にすれば、百数十円するペットボトルより、自家製の「お酢ドリンク」のほうが安くつくはずです。安くて、リフレッシュ効果があり、健康的なのですから、やはりもっと酢を飲料として活用してほしいと思います。

 時節柄、体を温めたいのであれば、ポタージュやお汁粉がお勧めです。単なるお湯(白湯)と比較すると、同じ500ミリリットルの量でもドロドロとしていて重量があるので物理学的に熱容量が大きくなります。その上、食べ物に近いポタージュやお汁粉は、内臓が消化活動を始めるためその運動による熱産生によっても体が温まります。さらには、糖質や脂質よりもタンパク質による熱産生のほうが強いこともあり、タンパク質が多い小豆をもとにしたお汁粉などは、寒さ対策には最適の飲料といえるでしょう。

精神的なメリットも

 冬場ということでいえば、発汗量が減るため、夏場と同じように水分を摂取しているとトイレの回数が増えてしまいます。大事なミーティングから抜けられずトイレに行きにくい場合などを想定すると、ゼリー飲料であれば水分を取り過ぎることなく、頻繁にトイレへ行くことを防げます。

 最後に、私自身は何を飲んでいるのか。お酢飲料を飲むこともありますし、できる範囲で栄養を意識してもいますが、普段よく飲むのは日本茶です。何といってもお茶の醸し出す雰囲気がいい。甘い炭酸水とお茶、どちらが高貴な感じがするかといえば、どうしたってお茶になりますよね。

 そうしたイメージによってもたらされる精神的なメリットも決して小さくありません。飲み物には栄養的な健康効果と同時に、手軽に気分を変えられる力がある。気分転換。これも広い意味では大事な健康対策であると私は考えています。

田中越郎(たなかえつろう)
東京農業大学名誉教授。1954年生まれ。熊本大学医学部卒業。医学博士。専門は栄養学・生理学。三井記念病院内科、スウェーデン王立カロリンスカ研究所留学、東海大学医学部などを経て東京農業大学栄養科学科へ。医学と栄養学の両面から食品と健康などについて研究を続けてきた。医療系学生向けの教科書などを作成し、一般書として『なぜ、一流は飲み物にこだわるのか?』の著書がある。

週刊新潮 2024年1月18日号掲載

特別読物「短期間で命の危険に! 奥深い『飲み物』の健康術」より

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