「正直不動産2」は前作を超える仕上がり…民放では観られない“大人向けドラマ”だと思う根拠

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

 ドラマの続編は期待外れに終わることもあるが、山下智久(38)主演のNHK「ドラマ10 正直不動産2」(火曜午後10時)は違う。2022年に放送された前作を超える仕上がり。脚本、出演陣の演技、演出の3拍子が揃っている。今の民放では滅多に観られない大人向けであるところもいい。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

大人向けの人情喜劇

「正直不動産2」は人情喜劇である。日本テレビ「池中玄太80キロ」(1980年)やフジテレビ「マルモのおきて」(2011年)、TBS「俺の家の話」(21年)などと大枠では同じ系統。この時点で大人向けだ。人情の機微は一定の人生経験を積まないと理解するのが難しい。

 主人公は山下が演じる登坂不動産の営業マン・永瀬財地。その日々を描くから、お仕事ドラマの一種でもある。しかし、サクセスストーリーや恋愛を絡める月並みなお仕事ドラマとは異なり、観る側に「働くこととは何か?」と問い掛けてくる。この点でも大人向けだ。

 ほとんどの作品が若い世代を狙っている民放ドラマとは異なる。第2回を振り返ると、よく分かる。

 永瀬とその部下・月下咲良(福原遥・25)は、家具の輸入販売業を営む寺島大助(迫田孝也・46)から1戸建ての売却を依頼された。ところが、2人が物件調査に出向くと、そこには病気療養中の寺島の父・喜助(苅谷俊介・77)と息子の直也(松本怜生・23)が住んでいた。それでも寺島は強引に売却を図ろうとする。借金を抱えていたためである。

 それより大きな問題があった。寺島が仕事で海外を飛び回っている間、喜助が妻の美由紀(田山由起・45)を家から追い出したというのだ。栃木県益子市の実家に帰った美由紀は1年前に病死した。寺島は喜助を酷く恨んでいた。

長年仕事をしてきた人の多くが共鳴

 永瀬は寺島に対し、「まずご家族で相談を」と、売却に反対する。だが、寺島は聞く耳を持たない。「あいつらは家族じゃない。もうとっくに縁を切った!」と言い放つ。

 それでも永瀬は寺島の家を売らなかった。かつては嘘を吐いてまで売り上げを伸ばそうとしたが、今は正直であることに徹し、客が不幸にならないよう願っているからだ。一方で、もとから誠実な月下は寺島家に何があったのかを知るため、美由紀の実家のある益子市に向かおうとする。

 ここからのシーンが大人向けであることを鮮明に表していた。寺島家の内情を調べようとする月下に対し、新入社員・十影健人(板垣瑞生・23)は「それって不動産屋の仕事っすか?」と、あきれる。十影でなくても若い人なら、そう思っても不思議ではない。筆者も若手社員のころなら、そう思ったかも知れない。

 しかし、月下は「これが私の仕事のやり方なの」と強く言い返す。今度は20年、30年と仕事をしてきた人の多くが共鳴したのではないか。相手側のことを第一に考えて仕事をする人を笑うことは出来ない。出世はしないかも知れないが、退職後まで周囲から尊敬される。

 その後、寺島の家は売却寸前となる。売却担当者がミネルヴァ不動産の神木涼真(ディーン・フジオカ・43)に変わったからだ。神木は悪徳営業マン。喜助らの追い出しを強行しようとする。

次ページ:家族の愛憎を描く

前へ 1 2 3 次へ

[1/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。