イラクを甘く見ていた日本の敗戦は必然 “戦犯”はGK鈴木だけでなく、29歳MFとJFA技術委員会

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狂った日本の歯車

 イラク戦はMF堂安律が出てきてからは日本の攻撃にも変化が見られた。しかし、記者席で取材していて、誰がどういう形でゴールを奪うのかまったくイメージができなかった。それだけ日本の攻撃は意外性に欠けていた。サイドから崩す狙いはあるものの、前半の浅野はクロスに飛び込むタイプではない。彼に代わったFW上田綺世は高さがあるものの、堂安が右、MF伊東純也が左に回ったため、今度は効果的なクロスが上がらない。

 上田は何度も動き直しを繰り返したが、彼の足元にも背後のスペースにも、パスが出ることは一度もなかった。サイドだけでなく中央からのポストプレーによる攻撃を森保監督は期待しての起用だっただろう。しかし、その意図は選手に伝わらず、ストレスだけを残して試合は終了した。

 この敗戦により日本は、決勝トーナメント1回戦で韓国と対戦する可能性が出てきた。大会前は「優勝するためにはどこかで、韓国やイラン、サウジアラビア、オーストラリアとは対戦しなければならないし、それが準決勝か決勝だろうが、そこで勝てばいいだけ」と思っていた。

 イラク戦で先制点を奪われても、早い時間に同点で追いつけば、いつもの日本に戻るだろうと高をくくっていた。しかし前半32分、FW浅野が絶好機にMF伊東にパスを出さずにシュートを外してから、日本の歯車が狂いだしていると感じた。

後味の悪い90分

 そして、試合に完敗しただけでなく、チームを建て直すメンタリティーの持ち主やプレーでチームを活性化できる選手がいるのかどうか疑問に思う後味の悪い90分だった。それだけ選手は自信を失っているように見えたからだ。ジョーカーであるMF三笘薫はインドネシア戦でも使えないが、ここは開き直ってチャレンジャーに戻って試合に臨むことが最善の策だろう。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

デイリー新潮編集部

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