「新NISA」を利用した“儲け話”にご用心 森永康平氏が潜入調査で暴いた「投資詐欺」の最新事情とは

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「森永康平さんという人をご存じですか?」

 森永氏が知らずして詐欺に巻き込まれていたケースは、これだけではない。自身のYouTube上の企画で、ある“潜入調査”を行ったときのことだ。投資詐欺を働く営業マンに偽名を用いて自ら接触し、直接対面したのだが――。

 そのときのやりとりを以下に再現しよう。

森永 もし今100万買うって言ったら、何か特典をつけてもらえませんか?

営業 これ出しちゃっていいのかな……。特別な情報を教えるLINEグループというもの
がございまして。

森永 なんですかそのグループって。

営業 「この株が上がる」とか、極秘情報を教えるLINEグループです。投資家とか有名人の方とかも、こういうところで情報を得てますので。

森永 その教えてくれるプロの方って誰なんですか。

営業 今一番注目されている経済アナリスト、森永康平さんという人をご存じですか?正直、我々プロから見ても、一番できるアナリストですね!

森永 ……。これは本当に本人なんですか?

営業 もちろんですよ。極秘のグループですので。

 あろうことか、森永康平氏本人を前に、「森永康平による極秘LINEグループ」があると明かしてきたのである。

「こんな形でも利用されているんだなと……。私は本人ですからなんとも言えませんが、専門家の名前を出して特別感を演出することで、信用を得ようとしているのでしょう」

心理的な揺さぶりも

 だが、笑い話では済まなくなってきているのが現状だ。

「昨今、メールやライン、SNSなど、あらゆる手を使って勧誘し、対面で投資話をするケースが増えています。比較的若い方がそのような被害に遭いやすく、私のところに寄せられた相談の中には、『もう500万円ほど振り込んでしまった』というケースまでありました。こうした背景を受けて、私自身に届いた勧誘にあえて乗っかってみたり、相談を寄せられた際にその詐欺師と直接会ってみたりするようになりました。その際のやりとりの音声を公開することで、彼らの手口を皆様に知っていただけたらなと」

 営業トークには、時代に合わせたワードが散りばめられているという。

「『新NISA』によって投資がしやすくなった話はもちろん、『仮想通貨』『NFT』などの流行りの言葉を使ってきたり、あるいは『大阪万博に関わる銘柄は国の補助が入るから儲かる』などといった“それっぽい話”をしてきたりするので、何の知識もなかったら、信じてしまう人もいるのかもしれません」

 心理的な揺さぶりをかけてくることも。

「相手が2人組で来ることも多々あります。そういう場合、最初は2人とも優しく接してきていたのに、こちらが投資を渋る様子を見せた途端に片方が急変して、『こんなに時間を使ってやったのに』と怒り出すことがあります。すると、もう片方が『まあ落ち着いて』『こいつもそれだけ儲けてほしいと思ってただけなので』などとなだめてくる。こうなると無意識のうちに、『怖い人から助けてくれた』という意識が芽生え、妙な信頼関係みたいなものが生じてくるんですよね。当然、相手は演技としてやっているのですが、こういう“劇場型”の勧誘にも注意が必要です」

 こうして巧妙化するやり口から、どう身を守ればいいのか。

「対面で営業を受けてしまった際は、必ず一度持ち帰ることです。相手は即決を求めてきますが、その場で同意することさえ避けられれば、後で詐欺だと気づけるはずです。また、投資におけるリターンの相場感を身に着けておくことも重要だと思います。日頃から身近な人とお金に関する話をしていれば、詐欺師が提案してくる投資のおかしさが、感覚的にわかってくるのではないでしょうか」

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